シズヲ

ジャバーウォッキー 4Kレストア版のシズヲのレビュー・感想・評価

3.8
テリー・ギリアムの初監督作品。怪獣に脅かされる中世を舞台に描かれる、村の青年デニスの奇妙な冒険。モンティ・パイソン的なドタバタ感に溢れた不条理ファンタジーだ。現代的な笑いの感性ではないけれど、何やかんやで謎に味わいがある。下らない部分も多いけど何だか嫌いじゃない。

全体的にブラック&シュールな味わいが強く、冒頭からジャバウォックに食い散らかされた惨殺死体が豪快に映し出されるのでぶったまげる。以後もジャバウォックの犠牲者が全く同じような死に様を見せるので半ば様式美的。バイオレンスな描写が幾度となくさらっと描かれるので、妙な毒々しさに溢れている。城下町の美術もやたらと猥雑かつ小汚いので、全編に渡って独特の下品さがある。王族などの上流階級ですらなんか薄汚いので味わい深い。そのくせ時折印象的な美しいカットが挟まれるので憎めない。

登場人物達もやけに変な奴らばかりで、主人公デニスの間の抜けた純朴さを中心にどいつもこいつもシュールな所作を見せてくれる。なんで主人公が惚れ込んでるのか分からない太っちょの村娘、不倫かまして非業の死を遂げる従者、謎に衝撃的な初登場を遂げる王様、強引で思い込みの激しいお姫様、演説下手な家臣に守衛コンビなど、揃いも揃って妙なインパクトがある。前述の小汚さと暴力描写の中でこいつらはマイペースに振る舞うので、なんとも言えぬ不条理感がある。

冒頭の怪獣目線でのカメラワークや犠牲者ばかりを映し出す演出などから「これはジャバウォックそのものは直接出てこないタイプの映画やな」と思っていたが、終盤にガッツリ出てきたのでビビる。殆どラスト付近だけの出番に等しいのに、その威圧的な造形や黒騎士との格闘ぶりも含めてインパクト大。工夫を凝らして巨大感や怪物性を際立たせているようなので興味深い。
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