のんぴ

1秒先の彼ののんぴのネタバレレビュー・内容・結末

1秒先の彼(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「自分のペースで歩めばいい」そう安心させてくれる作品。

プレミア舞台挨拶にて鑑賞。

終始穏やかなムードで時折コメディ要素もあり、観ていて心地が良かった。
1秒早いハジメと1秒遅いレイカが、思わずこちらも微笑んでしまうような、愛おしいキャラクターで描かれている。なんせ30代の岡田将生が中学生を演じても違和感がない!舞台挨拶で拝見した彫刻のような真っ白な爽やかイケメンが、作中では「顔はいいのになんか残念」な三十路を演じるわけだが、これが本当に残念に見える(笑)素直な笑顔と言動と京都弁と、岡田将生ならではの儚さが、守りたくなるようなハジメの魅力を引き出していた。清原果耶の透明感もさすが。淡々と話している中での、恋敵への感情のこもった一言は気迫があった。ハジメへのレイカの一途な想いが、切なくてキュッとなるようにひしひし伝わってくる。

「時が止まる」系の作品は少なくないが、それを利用して長年の希望を叶える過程をここまで赤裸々に描く作品もそうない気がした。目を開いたまま固まった岡田将生がマネキンのように引きずられているのには笑ってしまった。あと、一つ腑に落ちないのが、あの理屈でいくとハジメ以外の多くの人も日曜日を失っているはず。花火大会がすでに開催されていたり、周りが当たり前のように月曜日を過ごしていたり、若干気になるがまあ深掘りしないでおこう。

毎日AM6:59に起きるハジメも、動いている被写体を撮るのに精一杯なレイカも、周囲とペースが合わなくても、その人にしか見えない景色や瞬間があるはず。ちょっとズレてるくらいは問題ないし、何なら笑いを生み出せる。そのくらいポジティブに捉えて、心軽やかにマイペースに生きても良いのでは。そう思わせてくれるような、初夏に見たい作品。
のんぴ

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