Koichi

唄う六人の女のKoichiのレビュー・感想・評価

唄う六人の女(2023年製作の映画)
4.0
美しく奇妙な女たちに
隠されだ“私密”とは──

父親の死で相続した山深い土地に隠された秘密と父親の思いを知る中年男性の運命を描くファンタジー・ドラマ。

父親が残した山深い土地を相続する男を竹野内豊(萱島)、その土地の買付を行う開発業者を山田孝之(宇和島) が演じている。そして謎に満ちた六人の女性たちを水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈(咲洲かすみ)で美しくも艶やかに、そして怪しく彩りに添えられている。

この物語は、観客がまるで主人公のように中盤までは、全く情報がなくわからない、まさに“謎”のまま進行していく、自分がなぜここにいるのか?そして、この美しい女性たちは何者なのか?まるで異世界に迷い込んだかのような状態になっている。ただ冒頭のシーンから既に森と女性たちの謎への導きを意味づけるような伏線を張っていたと言ってもいいだろう。そして、その答えはエンドロールで判明するが、ここでは語らずにいよう。

主人公の二人、萱島と宇和島は対極的な位置にいると言ってもいいだろう。考え方や行動もそうだが、“迷宮の森”で過ごす時間で、その“自然界の真理“に対する感じ方も違う。だからこそ、彼女たちからのアプローチのされ方も違っていたのかもしれない。彼女たちは彼らの内なる”魂の真意“を感じとっていたのではないだろうか。

一つ疑問に感じたのは、武田玲奈が六人の女性の一人と萱島のパートナーの咲洲かすみを演じていることだ。なぜ彼女が迷宮の森の女性と咲洲かすみ、両方の存在として描かれているのか?萱島の深層心理がその姿で見せていたのか…それとも?ただ迷宮の森で咲洲かすみの姿を見てから心の中の“何か”が変わったことは間違いがない。

今回のテーマは、まさしく今世界が岐路に立たされている“自然環境問題への警鐘的な側面”もあるように感じる。自然との共存というよりは、人間そのものが自然に生かされていることをもう一度再確認することが必要なのではないだろうか。たった一人だけでも秘めた強い想いが、後世へと受け継がれていく。一人一人が小さい一歩でも踏み出すことが大切なんだと感じる作品だった。
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