深獣九

唄う六人の女の深獣九のレビュー・感想・評価

唄う六人の女(2023年製作の映画)
3.0
エンドロールに「監修 大○隆○」って出てくるんちゃうかなって思てまいましたごめんやで。

竹野内豊と山田孝之のW主演ということ、山奥の村にふたりが拉致されるということくらいしか知らずに観た。安部公房の『砂の女』のような、不条理ホラーを勝手に期待していたのだが、まったく違っていた。
いや、面白かったことは確かだが。

緑深い森、古民家の風合い、ミステリアスで魅力的な森の女たち、水中のダンス、宝石を零したような星空……映し出された風景のすべてが美しく、映像に引き込まれる。

役者たちも己の役割を完璧に演じている。流石の一言である。

主人公は事故にあって気を失い、気がつけば森の民家で縛られていた。村の女は誰ひとり喋らず、奇妙な振る舞いを見せる。そして主人公は、森の奥深くに存在するあるものを探せとうながされるのだが……。

と、ここから話が展開し、物語の本題があらわになる。ただの『砂の女』ではないことがわかるのだが、幻想的な舞台にいきなり現実がぶっ込まれるので、たいそう戸惑った。
率直に言えば「説教くさい」映画に変わったのである。まるで中学校の道徳の授業で流すようなテーマ。ある種の団体が啓蒙のために作成したような。冒頭のコメントでお察しいただけるだろうか。
もしテーマを知っていたならば、まあそういうのもあるよねと楽しく観られたのかもしれないが。

どういう観客を想定していたのかも謎。

そんなことが気になって、集中力が途切れてしまったのだが、それでも最後まで楽しめたのは役者の熱演ゆえ。特に山田孝之のクズっぷりは実に清々しかった。惜しむらくは最後、もっと酷い目にあって絶命してほしかった。生きたまま動物たちに食われるとか。四肢を喰い千切られて絶叫の中絶命するとか。まあそこも罪を憎んで人を憎まず、人間も生き物、地球はすべてをやさしく包むといったメッセージが込められているのか。やっぱ説教くさい笑

とはいえテーマには共感できるので、良い映画だったとは思う。
深獣九

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