ぶみ

唄う六人の女のぶみのレビュー・感想・評価

唄う六人の女(2023年製作の映画)
1.0
※本作品の点数は、私の拘りポイントにより星1つですが、そこさえ抜けば星3.5です。

踏み込んではいけない「禁断の地」へようこそ。

石橋義正監督、脚本、竹野内豊、山田孝之主演によるドラマ。
人里離れた山中で交通事故を起こし、気を失った主人公二人が、目を覚ますと監禁されていたことから、脱出しようとする姿を描く。
父が遺した山を売るために実家に戻ったフォトグラファー・萱島森一郎を竹野内、その土地の買主である開発業者の下請け・宇和島凌を山田、二人を仲介する不動産屋を竹中直人、二人を取り巻く六人の女を水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈が演じているほか、白川和子、津田寛治等が登場。
物語は、不動産の売買契約を結んだ帰り道、萱島を乗せ、宇和島が運転するクルマが事故を起こし、気がつくと縄で縛られており、森に暮らす六人の女たちが現れるというシチュエーションでスタートするのだが、ここまででも、山深い森を舞台としていることから、虫が随所に登場したり、はたまた水川演じる「刺す女」に至っては、いきなり蝉の羽根をもぎ取って食べ出すため、不穏な空気感に関しては満点であり、中盤あたりまでは、公式サイトでも謳われているようにスリラー的な雰囲気で進行。
てっきり、そのタイトルのように、謎の六人の女性陣が、素晴らしい歌声を響かせるのかと思いきや、全く台詞を発しない設定に面食らうこととなるのだが、そこに気づくのと引き換えに、本作品の真髄やメッセージが伝わってくる展開は思いもよらないもので、私的にはアリ。
また、答え合わせができるエンドロールも見逃せない内容となっていると同時に、振り返ると、タイトルのロゴ自体にも仕掛けが施されていたのには唸るしかない。
さて、冒頭に書いた本作品を星1つとした理由はここから。
前述のように、冒頭事故が起きるシーンがあるのだが、これは宇和島が運転するホンダ・オデッセイの後席に萱島が乗っているというもの。
運転手の宇和島はシートベルトをしているものの、後席の萱島はしておらず、こういったことは車社会に対するリテラシーが問われる部分。
ましてや、シートベルトをしていない状況下で、結構なスピードで事故を起こしているため、気絶どころか、後席からフロントガラスまで吹っ飛ばされていてもおかしくなく、軽症では済まなかったはず。
以前観た、熊切和嘉監督『658km、陽子の旅』に続き、邦画では時折見られる残念なことであり、是非襟を正してもらいたいところ。
そこを除けば、あちこちに張られた伏線の回収が気持ち良く、思いもよらない後半の展開を受け入れられるかどうかで評価が大きく変わるとともに、これまた先日観た、塩田明彦監督『春画先生』で柄本佑が水色のブリーフを履いていたのに続き、本作品でも竹野内演じる萱島が水色のトランクスを履いていたため、今のパンツのトレンドは水色なのかと思ってしまった怪作。

森にはその答えがある。
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