愛

ダミー男子の愛のレビュー・感想・評価

ダミー男子(2021年製作の映画)
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監督と直接お話する機会なんて今まで無かったし、普段触れることがない作品なので興味本位で。@dummydanshi_movie

あえて予告編や前情報など無く鑑賞したのだけど「ダミー男子」そういう呼称の人形か何かだろうか、という第一印象を受けたのは何故だろう。(ラブドールを題材にした作品のように)
実際にはレンタルおじさん的な仕事をしている男を指しているのだけど「ダミー男子」の方が渇いた響きで刹那的、使い捨て感すらある。"差し支えなさ"だけではなく、より無個性であるほうが好ましいというような。

代打なら誰でも良いということでもない。
きっと誰しも人間関係において物差しと計量器を持っていて、無意識に格付けをしている。この人は図々しいから離れたところに置こう、あの人はよく知らないけど清潔感があって好印象だからもっと近づきたい、といった具合に。
レンタルされたりダミーになったりするには、万人が考える人間平均値から乖離がなく容姿も中身も"人畜無害枠"でないといけない。まるでAlが創り上げる虚像のように。
恐らく揶揄する目的で生まれた"量産型"という言葉、そう呼ばれる人々とカルチャーも、名前が付いた時点で立派なアイデンティティ。彼にはそれすらも与えられず、自我を否定されているようで腑に落ちなかったのだろうか。

友達の実家みたいな喫茶店、目障りな位置でチラつくイルミネーション、厭らしく映る左手の包帯、クラスのカースト下位と呼ばれそうな伊達メガネ、真冬に春夏物のバッグを身につける女(シリアルママにボコられるわ)、昼間の空に張り付く明るい彗星。静と動の塩梅が不気味で、脱出ゲームの世界に迷い込んだかのような錯覚をもたらす。
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