Hiroki

帰れない山のHirokiのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
3.8
GWも終わった平日の夕方。シネコンの小さめスクリーンながら5割程度でかなり女性が多かった。
さすがヒュールニンゲンという感じ。
ちなみに全然関係ないんだけど上映時間過ぎてから映画の予告じゃない普通のCM流すの止めて欲しい。5分くらいやってた。
上映時間前なら許せる。早く来すぎたんだよねと自分に言い聞かせるから。
映画の予告なら良い。興味ない映画だとしてもそこまで雰囲気は壊れない。
でも上映時間ピッタリについて座って普通のCM流れるとテンションが...家で配信見るんじゃないんだからさ...

さて今作は2022カンヌの審査員賞作品で、イタリアのパオロ・コニェッティによる世界的なベストセラー小説『Le otto montagne』が原作。
クリエイターはフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ヴァンデルメールシュのパートナーでもある2人。
元々俳優のヴァンデルメルーシュはたぶん映画初監督ですかね。
コロナ禍のロックダウンで2人で作業しているうちに、何かを2人で成し遂げたいと思ったらしいです。

興収的には全世界で約970万ドル(約13億円)とまーいわゆる商業映画ではないのでそこそこ健闘している方なのかな?(ちなみに2022カンヌのパルムドール『逆転のトライアングル』は全世界で約2,600万ドル、同じ審査員賞の『EO』は約230万ドル。)
ただ撮影にけっこうお金がかかっていそうな気がするけど...軽く調べても制作費はわからなかったのですが。

さて内容は大雑把に言うと2人の男の友情物語。
ただ観ていて思ったのがこれ非常に作りが日本的だなーと。
まず自分語りのナレーションが結構入ってます。ヨーロッパの映画には珍しいように感じる。原作の影響なのか...
そしてなんか異常に大仰な音楽がたくさん使われている。
普通こんな大自然が舞台なら自然音を取り入れた静かな作品にしそうなものですが、非常に仰々しい(騒がしいとかうるさいとは少しイメージが違う)雰囲気に。
ここらへんが妙に、過度に劇的に演出されているように感じてしまった。
ちょっとあざといというか...
そして圧倒的に思う事はとにかく長い!
147分。この内容で約2時間半はなかなかに厳しい。
147分の中に展開が4つくらいあるんですよ。だからこれはドラマシリーズとかにしても良かったのかもなーなんて思ったり。

ここまで文句を並べてきましたが、基本的には良いドラマだったんですよ。
近年ここまで真正面から男同士の友情を描いた作品もあまり無かったかなと。(最近だとBL的な要素が入ってくる事が多いような。)
プラスして父親との物語。
面白いのがピエトロ(ルカ・マリネッリ)は父親と疎遠になりその間に友達のブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)が父と仲良くなっていた事を父が死んだ後に知るという流れなんだけど、実はそのブルーノも自分の父親とは上手くいってないんですよね。
自分の親とはうまくやれないけど人の親ならできるという。
家族の難しさを象徴している。

あとはやはり原題Le otto montagne=“8つの山”と“ひとつの山の頂”というメインテーマ。
何かを極める事と色々な事に興味を注ぐ事。
止まる事と動く事。
時間の経過と共に移り変わる2人の男の生き方を対比させながら描いている所が抜群に良い。
そしてラスト。物語が進むに連れずっと2つの結末が頭に浮かんでいて。
1つはやはり小さい頃に断念してしまった氷河に再チャレンジする事。これは非常に美しいラストになったはず。
しかし実際には最悪の結末に...
まー原作があるので仕方ないんだけど、何かを極めて好きな土地に止まり懸命に働き続けた男の末路がアレというのは少し気持ちが沈んだ。
それが現代社会の厳しさなんだと言われたらそーなのかもしれないけど。
それまでずっと美しいなーと思って見ていた北イタリアの壮大な風景が、少し畏怖の念に変わったように感じた。

最後に全然関係ないんだけど、今作の前後に『EOイーオー』と『TAR/ター』を観てしまって、この2つがあまりに衝撃的だったので相対的に今作の評価を下げていると思います。
フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ヴァンデルメールシュには申し訳ないのですが...あとこの2人の名前をまとめて覚えられる気がしない...
上記2つのレビューはしっかりまとめてから後で書きます!

2023-32
Hiroki

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