イタリアの世界的ベストセラー小説『帰れない山』の映画化。
う~ん、しみじみ…
沁みる。考えさせられる。
北イタリアの雄大なるモンテ・ローザ山麓を舞台に、そこに暮らす牛飼いの少年(ブルーノ)と、休暇で訪れた都会育ちの少年(ピエトロ)の長きに渡る友情と成長を描いた作品。
まずは、雄大な自然の美しさに圧倒される。とりわけ足のすくむようなトレッキングシーンの臨場感は圧巻だった。
これはスクリーンで観たかったなぁ…
自然が美しさだけでなく厳しさと残酷さも合わせ持つように、人生もまた美しく厳しく残酷。
山の持つ神秘性は人間の精神性にも大きく作用してるかのようにリンクしながら描かれる。
子供時代、正反対の2人が無邪気に戯れるシーンはキラキラしていて何処かノスタルジック。“あの頃“の記憶が呼び覚まされるシーンだった。
そして大きく佇む山に見守られ、全てを教えてくれた山と対峙し、それぞれが自分と向き合い葛藤しながら本当の居場所を求めて彷徨う。
出会いと別れ、孤独、心地よい沈黙、信頼、葛藤…。そして、父の遺志。
様々な感情が丁寧にじっくり紡がれる。
“自然時間“に合わせると当然長尺にもなる。
単純に男同士の友情物語と言ってしまうとあまりに軽く、男性の持つロマンの部分と考えると腑に落ちる。
ブルーノとピエトロ然り、父親も然り、それぞれのDNAに刻まれた男のプライドとか、自由への憧れとか、ロマンとか…
決して女性目線でとやかく言えない領域のようにも感じた。同時に羨ましくも。
程よい距離感で、しかも不器用な男同士の繋がりは、近過ぎないからこそ固くて深く、人間行き着くところはひとりと考えると、それもまたロマンを感じたり。
表面的なストーリーの部分より大きく逸れて、人生のアレコレを考えさせられる良作だった。