KnightsofOdessa

パシフィクションのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

パシフィクション(2022年製作の映画)
3.0
[高等弁務官、タヒチの海にて悪魔と宴す] 60点

2022年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ジェラール・ドパルデューが優しいムスカ大佐を演じているかのような、常にトロピカルシャツに白スーツで身を固めるタヒチのフランス人高等弁務官デ・ロールを主人公に据えた、仏帝国の黄昏や終末への絶望感についての物語。仏海軍潜水艦が地元の女性を夜な夜な船に乗せて殺してる、とか、沖合いで核実験が70年ぶりに再開される、とか、都市伝説みたいなことを信じたり信じなかったり、伝統衣装で闘鶏のダンスを披露する現地住民を演出したり、パスポートをなくした自称外交官の飲んだくれの相手をしたり…といった感じで、現地の生活と影に蠢く不安を、良く言えばドリームライクな、悪く言えばダラダラとした時間が流れ続けて描いている。途中から作品の良し悪し云々を超えて、最早どうでもよくなってきてしまった。例えるならウザい上司の自慢話に適当に相槌を打ちながら、早く終われと念を送るような、そんな感じ。どうやら脚本がなかったようで、どこに向かうか分からない即興芝居を3台のカメラで撮りまくって、最終的に540時間の特急呪物が誕生したらしい。DAUかな?

興味深いのはデ・ロールが目を付けたホテルの受付シャナという人物だ。調べてみると、ポリネシアには"第三の性"(と形容するのが正しいのかは不明)とされる性自認が伝統的に存在するらしく、シャナも中性的な存在として描かれている。ただ、全編通して"植民地主義的な視線を批判するという体で植民地主義を体現する"といった感じなので、シャナを含めて何もかも消費されてしまう。

本作品はCanon社のBlack Magic Pocket Cameraという小型シネマカメラで撮影された初めての映画らしい。冒頭を含めた風景ショット(土産屋の絵葉書みたいな加工具合)や夜のシーンの安っぽさはこれに起因しているのか?小型船でサーフィンするシーンだけは良かったけど。
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