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リカルド・レイスの死の年のNapponのレビュー・感想・評価

リカルド・レイスの死の年(2020年製作の映画)
3.9
雨、雨、雨のリスボン。
原作は小説で、かなり文学的。

主人公は、1935年12月29日に、16年ぶりに亡命先ブラジルから故郷ポルトガルに戻ってきたリカルド・レイス。

亡き友人である詩人フェルナンド・ペソアの墓参りを終えホテルにいると、なぜか死んだはずの彼がいる。
どうやら、お腹の中にいた年月である9ヶ月は死後も外出ができる決まり。

文字は読めないし、鏡には映らないが、フェルナンドは死者の特権を活かし、時折気ままに現れ、傍観者らしく言いたいことを言って消えていく。

サラザールや政治的集会、ヒトラーの台頭など、1930年代のヨーロッパが出てくる。貧富の差があり、抑圧され閉塞感漂う雰囲気。
時代背景を知った上だとより深さが増すだろうが、さほど知らなくてもファンタジーっぽさや幻想的な感じで楽しめる。

フェルナンドがまるでリカルドの分身のようにも感じられ、時に自問自答のような対話がよかった。

生きていても死んでいても安息がないー。
生きていれば時間があるが、時間は足りないー。

個人的にはラストまでとてもおもしろかった!
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