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フラッドのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

フラッド(1998年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

大雨が続き浸水した田舎町で、現金輸送車が深みにハマリ動けなくなる。その金を狙って強盗団が襲撃。運転手のチャーリーが撃たれ、相棒のトムは輸送車の300万ドルを持って逃走。警官に保護されたトムが保安官に金の隠し場所を話すと、保安官まで金を探し始める。三つ巴の攻防が続く中、ダム決壊が迫る…。

公開時に劇場で見たが、懐かしさのあまり再鑑賞。今はこんなCGなしの実写アクションが少なくて寂しいなぁ…。

ストーリーは至ってシンプルで潔い。
洪水に襲われた町を舞台に、現金を巡って男たちが争うだけ!
いわゆる「火事場泥棒」との攻防を描くサスペンス・アクションの秀作。
もっと評価されて良い作品だと思う。

何と言っても、CGなしで水浸しのセットの中で繰り広げられるアクションが素晴らしい!
上手い具合に夜の設定で、暗くて遠くまでは見えないが、町全体が水浸しの光景が全てセットとは!
見せ場となる教会や建物の周囲など、次第に水かさが増してくる芸の細かさ。
主人公トムが留置所に閉じ込められる中、水責めに会うシーン(懐中電灯の中身を抜き、シュノーケルにするアイデアには驚いた)や、ヒロインが階段の手すりに手錠で繋がれる中、水かさが増して溺れそうになるシーンのスリルに生きている。

さらに劇中は視界を遮るほどの豪雨を常に降らせている。
相当な費用を掛けていると思われる、この美術セットのこだわりは凄い。

その中をモーターボートやジェットスキーでの追跡劇と銃撃戦が繰り広げられる。
狭い学校の廊下をジェットスキーで追跡、モーターボートが教会の窓を突き破ったり、屋根の斜面でジャンプする。

ストーリーはシンプルでありながら、骨子の部分には西部劇の香りがする。
主人公トムは見知らぬ町でトラブルに巻き込まれる「流れ者」。
町の悪党は西部劇よろしく爪弾き者で構成されており、主人公1人が悪者4人と立ち向かう最初の構図は「真昼の決闘」のよう。
そして後半、治安を守るべき保安官が金に目が眩んで、どさくさ紛れに金を頂こうとするのはマカロニ・ウェスタンくさく意外な展開と言える。

舞台が洪水でなければ、乗るのがボートではなく、馬ならば西部劇に見えるだろう。
意外と王道を押さえていて、スリルの連続となる脚本が上手いと思ったら「スピード」のグラハム・ヨストである。

キャストも主人公トムにクリスチャン・スレーター、どこかお人好しの強盗団のボスにモーガン・フリーマン、保安官にランディ・クエイドと、当時としては個性派を集めたキャスティング。
それぞれの事情もセリフで良く描いている。

保安官たちの武力に押された強盗団のボスとトムが共闘して彼らを倒す。
やってきた救助隊を見て、ボスは一袋の札束を持って消える。
縁もゆかりもない者同士のドライな即席バディアクションの余韻である。

東日本大震災の津波や、台風による河川の氾濫を知る日本人からすると、水の流れが遅いとか、汚れた水の中で探し物などできないだろうとか、ツッコミどころはある。
ピンチなのに軽口叩く人物像にも「ずいぶんと余裕かましてるなー」と言いたくもなる。

しかし、そんな90年代の大らかなアメリカンアクションが愛おしい。
ピンチの連続にハラハラして、本当の悪者はキッチリと死に、主人公はキッチリと役目を果たす。
安心して見れる王道の娯楽作品だ。
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