ひろゆき

プアン/友だちと呼ばせてのひろゆきのレビュー・感想・評価

プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)
3.9
銀幕短評(#655)

「最後の一杯」(原題)
2021年、タイ。2時間9分。

総合評価 78点(うち、酒加点5点)。

そうなんですよね、どうしたって やっぱりバーに足が向きますよね。人生の分かれ道でも もちろん。

わたしは無期限禁酒処分をじぶんに科しているのですが、バーにはよく行きます。で、いつも鉄の掟(おきて)を守って、ノンアルコールのカクテルを注文します。

おとといの夜は東京丸の内のバーでキャビアをつまみに何杯か飲みました。これはルール上OKです。わかい女の子(社会人1年生)とふたりでした。これもルール上OKです。

きのうの夜は、地元のバーを2軒ハシゴしました。一軒目はすてきな日本酒&ワインバー、二軒目はカジュアルな(カジュアルすぎない)バーで、やはりわかい女の子(東京とちがう子。社会人1年生)とふたりでのハシゴ酒でした。これもルール上OKです。しかし、一軒目での問題はバーの在庫で、日本酒バーに置いてあるはずの いつも飲む柑橘(スダチかな?)ジュースの取扱いが知らない間になくなっていて(ノンアルコールビールは前からありません)、日本酒かワインかの二者択一になってしまったことです。

連れの女の子は白ワインが好きなので、おかわりをしながらつまみ(スペイン、マラガ産の大粒レーズンが最高においしい)をポリポリかじっています。究極の選択にせまられたわたしは、やむなくグラスの赤ワインを注文し それを目の前の飾りとしてカウンターに置きました。いわゆるオブジェですね。ただし注文のときは、辛口のボディ重め できれば渋口 とじぶんの好みをしっかり伝えました。彼女との会話がどんどん続くので、のどがかわくし まあちょっとならいいかと そのワインをすこしだけすすります。すてきな味です。またしゃべりがつづくと、またごくわずかにオブジェをすする。あれれ これではいかんと、チェイサー(水)をお願いして体内アルコール濃度をかぎりなくゼロに近づける。これは、ルール上ぎりぎりOKのラインです。か?

女の子がひとしきりワインを飲んで満足したので、わたしはつぎに日本酒の3点呑み比べセットを彼女に勧めます。それはこの店のウリで、好みの日本酒のタイプを店主に伝えると、かれがそれにふさわしい3銘柄を選んで、すこしちいさな器にそれぞれ満たしてくれるという趣向です。そのチョイスを彼女が おいしいおいしいと ことばにするので、勧めたわたしもいい気分です。と、もうかれこれ時間がたったので 暇(いとま)しようという段階で、彼女がわたしにその3杯の酒を味見しないかと誘います。一瞬ためらったあとで、わたしは仕方なく彼女のことばに従いました。こういう判断は速いです。能動的な飲酒はもちろん×ですが、社交重視の受動的な味見はせいぜい△印にとどまる。というのがわたしの鉄の掟の運用です。

ひとつ目の盃(さかずき)はすっきりした味わい、ふたつ目はバランスの取れた飲みごたえのある酒、三つ目はあとに独特の香りがぬけるすばらしい味(土佐の酔鯨だと教えられました)。ふたりであれがおいしいこれもおいしいと盛り上がって、やはり酔鯨がおいしいと意見が一致しました。さいごに彼女に、ところで一番好きな酒はなんですか?と訊くと、ウイスキー それもラフロイグだといいます(彼女は食事のときに生ビールを、この店で白ワイン2種と日本酒三種を飲んでいます)。わたしはキホン紳士なので「じゃあもう一軒だけ行こう」と応じます。すでにもういい時刻になっているからです。

つぎのバーで彼女がラフロイグのロックを注文すると同時に わたしはイチゴカクテルをノンアルコールで と注文したあと、彼女が手洗いにたったすきに、こんどはカウンターにあるサントリーウイスキー響(ひびき)のめずらしいラベルのボトルに ふと目を留めます。バーテンダーさんになにかと尋ねると、桜材の樽で熟成した希少ボトルだといいます。筋金入りの響ファンである わたしは、わたしは、わたしは。こういうときに「魔が差す」と、むかしからひとびとは語り継いできました。えっと、それをショットグラスにストレートで注(つ)いでください、ふたつのグラスに。ひとつは少量(つまりわたし用ですね)、もうひとつに残りを。と注文しました。手洗いからもどった彼女は、そのストレートのウイスキーにケホケホして、すぐにロックに差替えてもらっています。ああもったいないことをする子だなあと思いながら、わたしは じぶんのわずかな美酒を ちびりちびりすするのでした。

この連夜の行動を総合評価すると、だいたい〇と×が相殺されて、△かドローになると思います。つまり ぎりセーフですね、たぶん。

映画はよくできています。あの白いクルマ(ストーリー)が右にいくのか左なのかとじらしながら、すてきな音楽をまぶして 美男美女が恋の駆け引きをいろいろとする。思わず、じぶんの人生の過去を 探照灯(サーチライト)にさらされているような気分を味わえますよ。つまり甘酸っぱいような苦いような痛いような、あの味ですね。さいごの落としどころも納得です。

タイへは遊びと仕事とで、4回くらい行きました。鼻にぬけるようなやさしい響きのことばですね、タイ語は。
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