チッコーネ

ミセス・ハリス、パリへ行くのチッコーネのレビュー・感想・評価

2.5
バイタリティに溢れた労働者階級の英国おばさんが、主人公。
ディオールのドレスを求める彼女のパリ珍道中を、戯画的に描く。
あらすじだけ観るとさもつまらなさそうだが、欧州主導ゆえ、デティールはそれなりに大人向け…、主人公はオートクチュールの基盤であるエリート主義にそぐわぬ存在だが、手間暇のかかる繊細な仕事に、共鳴可能なハートを持っている。
アメリカン・ヴォーグの撒き散らした「セレブ至上主義」やファストファッションが未だ蔓延する現代において、モードは本来の創造力を維持し続けるために「理由なきときめき」を喚起しつつ「実感の伴うリスペクト」を勝ち得なくてはならない。
本作の脚本はそうした基本を、最低限踏まえたうえで過去の物語を紡いでいるように観えた。
またサロン内で行われる上顧客向けショウの流儀や、専属モデルの仕事ぶりなどを垣間見れるのも、興味深い。

ディオール役の役者は本人によく似ていたが「セミクチュールや香水の販売が側近の発案だった」という話はフィクション?…、またその側近を演じた役者にサンローラン風のスタイリングを充てているのは、いくらなんでもやり過ぎではないだろうか(しかもセクシュアリティがヘテロ!)。
「ユペールが意地悪な人物をコメディタッチで演じていそう」という期待から観始めた作品だが、彼女の出番はさほど多くなく、印象も控え目だった。