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恋文
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『恋文』に投稿された感想・評価

あの名女優・田中絹代さまの監督としてのデビュー作。

冒頭から「ラ・カンパネラ」。
絶えず流れる音楽が印象的で、それは「風と共に去りぬ」のよう。そしてスカーレット&レットを思わせる美しきお二人だけど何れもそれは表面的以上のものではない。
ずっと愛していた幼なじみの女性に対し、ある出来事から愛に憎しみが加わり愛情ではなく愛憎へ…。
「この世界の片隅に」などにも流れていた名曲、「悲しくてやりきれない」のフレーズが聞こえてきそう( いっそテーマ曲にしてほしかったところだけれど、まだこの時代にこの曲は無い)。

全て観終えた時、ああ、このタイトルは「恋文」だった。まさにその通りの物語だった。「愛」も「憎しみ」も全て「恋文」から成るものだった……と気づく。
田中絹代監督の長編デビュー作品です。メロドラマなんだけど、すでにクラシックの風格を持つすばらしい作品。

ボクは監督としての田中絹代はもっと評価されるべきだと思います。少なくとも女優が監督「も」しているなどという副業的なものでは無いです。時の試練に耐え、現代にも通用する作品をたくさん世に残しています。それはデビュー作である本作でも明らか。

本作は時期的には小津安二郎監督の『東京物語』とか黒澤明監督の『七人の侍』、溝口健二監督の『雨月物語』と同時期。日本映画のレベルがグッと上がった時期ですので、その中に埋もれてしまうのは分かる。でも、それが理由で過小評価されるべきでも無いです。

主人公の真弓礼吉(森雅之)は復員兵で、戦争が終わっても道子(久我美子)から受け取った恋文と写真を肌身離さず持ち、定職にもつかずにあてどなく通子を探していた。兵学校の同窓生である山路(宇野重吉)にハチ公前でバッタリ出会い、山路のラブレターの代筆屋を手伝うことになるのだが……という話です。

本作のテーマは「罪のない者だけが石を投げよ」だと受け取りました。礼吉はやっと出会うことができた道子を強い言葉で責める。男性が勝手な理想を女性に押し付けるのは古今東西同じですよね。十分に現代でも通用するテーマです。ヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』(2023年)でも同じでしたよね。

本作の舞台は戦後間も無くで、終戦直後は色々ある。本作中で山路が言うように「日本人は一人残らずあのくだらない戦争の責任がある」のです。復員兵である礼吉に道子を詰る道理がどこにあるのか。これは女性の視点でなければ描けないテーマだと思います。

キャラクター造形もよい。森雅之は最初は純粋で一途な想いを持ち続ける男を、そして後半は過去に嫉妬にし、取り憑かれる男をきっちり演技分けています。森雅之って「未熟な男」がすごく上手い。それにしてもカメオ出演を含めてキャストが豪華。古本屋の女主人(沢村貞子)、古本屋の娘(香川京子)、洋妾(月丘夢路や中北千枝子)、道子の下宿の大家(入江たか子)、道子の勤め先の客(笠智衆)。

キャストやスタッフはさすが一流女優の監督デビュー作ですし、小津安二郎、成瀬巳喜男、木下恵介の全面的なバックアップがあっただけある。これだけでも十分に観る価値があります。しかし、一流女優としての上底だけでは、現代まで風化せずに残らない。女優として得た資産をきっちり作品として昇華させたのは田中絹代の監督としての技量に他なりません。構図の取り方や、カットの繋げ方も一流。
教授

教授の感想・評価

-
あんまり面白い映画だと思えなかったけれど、それでも非常にセンシティブな映画で引き込まれたところはたくさんあった。
前情報として、映画監督を務めるにあたって非常に勤勉に取り組んだというのを知っているというのも関係してはくるが、撮りたいものにまっすぐ取り組んでいる誠実さは心地よい作品。

タイトルバックの便箋に手書きで書かれたクレジットに、初監督作品である、という意欲が爽やかで楽しい。
また脚本として木下恵介の名前があるように、そのテイストも忠実に、非常にベタベタした兄弟愛に笑ってしまう。

かなり古い作品でありながら、その古い時代のテイスト以上に、ある意味でその極端で歪な人間関係の距離感が妙に現代的でもあって、強い作家性やこだわりが木下恵介然り、そして監督である田中絹代然り感じられて、特に終盤の展開や演出は非常にグレーな感情を描いていて圧倒される。

どうしても現代の文脈で観てしまうからこそ、スター女優田中絹代監督が、何故監督業に進出し、当時は特に「男社会」である厳しい制作現場でしごかれながら映画を作り上げたかというのを否が応でも感じてしまう。

背景には無論「戦争」が顔をもたげつつ、過去に囚われ、恋文に認められた貞淑な女性への幻想に囚われた礼吉(森雅之)と、戦時中は継母と折り合いがつかず、そこから出たい一心で礼吉への想いを残したまま、別の男に嫁ぎ、やがて米兵とも恋仲になっていた道子(久我美子)の「性差」の問題が現代でもリアルに映る。
家父長制の問題。独親の問題。特に男女の中にある価値観の相違の中で、見事なまでに女性の「生きづらさ」が映し出されていて驚く。

少なくとも、声高にフェミニズムを訴えなくても、作品の中でこそ、しっかりと描きたい物語を映し込もうとする覇気は映画をしっかりドライブさせていて素晴らしかった。

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