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瀬戸内寂聴 99年生きて思うことのKUBOのレビュー・感想・評価

3.8
今日の試写会は『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』をFan’s Voice独占オンライン最速試写会。

瀬戸内寂聴って、若い頃、結構やりたい放題なことやって、突然出家した尼さん、くらいな認識しかなかったけど、99歳まで生きてたのね。ホント波瀾万丈の人生。

監督は、瀬戸内寂聴さんに17年間も密着取材を続けてきた中村裕さん。撮影も語りもひとりでやっていて、作品は基本寂聴さんと裕さんのトークで進められる。

「生きることは愛すること」と言う寂聴さん。晩年は、笑わせながら聴衆を包み込む温かい説法で人々から慕われていたが、若い頃の奔放さは今聞いてもびっくりする。

夫と娘がいるのに、夫の教え子との不倫にハマり、「小説家になるために家を出る」と嘘をついて駆け落ちの約束までしたのに彼氏は来ず、結局小説家になったのだとか。

「人を好きになるのに理由はない」

「恋愛はかみなりだから、落ちたらしょうがない」

もう90歳過ぎたら好きなこと言っていいだろうけど、寂聴さんはその後も妻子ある男性と不倫を繰り返し、それを小説にして売れっ子の作家に。

隣で奥さんが「こんなの許されるなら『ベッキー』があんなに叩かれるなんて変!」とか言ってるが、ごもっとも(笑)。

寂聴さんは51歳で突然出家するんだけど、その理由が「純粋な愛を書くために、性愛だけを断ち切るため」だったというのだから驚きだ。

画面の中で、寂聴さん、がつがつ肉ばかり喰う。あの高齢で、この食欲には驚かされる。あれ? 出家した人って、獣の肉なんて食べていいんだっけ?

寂聴さん本人曰く、「私は堕落坊。嘘はつくし、肉は食べるし。でもセックスだけはしていない!」なのだそう。

呆けてきたことが自分でわかって泣いちゃうところも、かわいい。好きな人にそんな姿を見せたくなかったんだろうなぁ。

コロナ禍で、家から出ない生活が続く中、99歳でこの世を去った寂聴さん。

「したいこと全部したからいい一生」

そう言い切る寂聴さん。何でもズバッと言い切るその魅力は、例えが違うかもしれないけど「デヴィ夫人」みたいな感じがした。

本作は、愛しい裕さんが来てくれた時の少女のような目をした寂聴さんの記録であり、作品自体が裕さんから寂聴さんへのラブレターなのだろう。
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