OBL1VIATE

フィンランディアのOBL1VIATEのレビュー・感想・評価

フィンランディア(2021年製作の映画)
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初レインボーリール。
きっと低予算だろうに良くここまで綺麗に撮ったなと…シンプルに撮り方やドローン等の音響の使い方が優れていて極めて美しい映画だった。
強烈な色彩のオアハカで「第三の性」として生きるムシェ達の生き様に留まらず、モノトーンで統一された先進国のファッションブランドが(顔を合わせることもない)途上国の職人から搾取し、剰えは自分達を平然と正当化する描写が絡む様は、全てが異なって見える我々の世界が地続きであることを思い知らせる。結末は冒頭で予告されるにも関わらずクライマックスへの運び方が見事で、久々に「やられた!」という気持ちでエンドロールを迎えた。

自分のSOGIを自覚し始めムシェ達の元に通うティーンのサポートをしたムシェに母親から浴びせられる「子供の世話をしたかったら自分で産みな!」という捨て台詞が痛かった。その母親はたった一人の「息子」のことをこの世で最も大事に思っており、しかし彼女は今後もその子を「息子」としてしか愛せずそれ故に子供が苦しみ続けることを承知しているムシェ達は、彼女の罵倒の言葉を真正面から冷静な面持ちで受け止めるのだ。無事に生きてさえいてくれればいい、という気持ちはその「無事」が揺るがされる時まで本人すらも気付くことはない。

身の回りの世話をさせておきながら自分を嘲り罵り続けてきた瀕死の父親が縋った手を払って青空の下に歩み出した彼女がその後苦しむことのないように、と思う。
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