眠人

ナワリヌイの眠人のレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
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ロシアの反体制派(反プーチン派)のカリスマであるアレクセイ・ナワリヌイのドキュメンタリー。クレムリンの関与が疑われる毒殺未遂事件でナワリヌイは生死の境を彷徨う。生還した彼は仲間とともに、情報機器を駆使しながら自身の毒殺未遂に関わった人間たちに迫っていく。

ナワリヌイの人生や思想的背景は丁寧に描かれていなかったけれど、お茶目で家族愛が深く、死をも恐れないナワリヌイのキャラクターは被写体として十分魅力的だったように思う。FSBのパスワードのネタに象徴されるように、情報が筒抜けになっているロシアの諜報機関のお粗末さには驚いた。

ナワリヌイは現在収監中で刑期は20年近くになる可能性もあるという。体制を批判する人間が次々と逮捕されたり、暗殺されてしまう権威主義社会は恐ろしい。ウクライナ侵攻含めて、一刻も早くプーチン政権には倒れて欲しいけど、プーチンがいなくなっても、利権と汚職で機能不全を起こしている統治システムが修復されなければ、第二、第三のプーチンが現れることになるのかもしれない。これは全くの他人事ではなく、人権や表現の自由を軽視すると日本社会だってロシアのような状況になるのかもしれない(既にそうなりつつある?)。ナワリヌイが最後に残した「絶対に諦めるな」という言葉を常に反芻しながら権力を絶えず監視していく必要がある。
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