Ginny

ナワリヌイのGinnyのレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
5.0
みなさん、見てください(血涙)

『事実は小説よりも奇なり』
第95回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞のプレゼンターが語った言葉の通りでした。
お恥ずかしながら(本当恥の多い人生や…)ナワリヌイのことは全く知らず(…)アレクセイの奥さん、ユリヤが授賞式で語る様子が目に止まって、語る言葉に動揺して映画に興味を持ちました。
アレクセイ・ナワリヌイが今、刑務所にいるってどゆこと!??!!?

有難いことにタイミング良くWOWOWがナワリヌイの映画本編を放送してくれたので録画して鑑賞。
自然系じゃない、政治的な長編ドキュメンタリー映画を見るのは初めてでしたが、見飽きさせない構成とフィクション顔負けの劇的展開に圧倒され惹きつけられ衝撃を受け放心状態となりました。

言葉の綾ではない、体を張った行動は彼の真剣さが伝わる。

プーチンが、彼のことをYou know whoみたいに扱うのが可笑しい。ハリポタ読んだことないのかな。
ナワリヌイの告発を受けて、政府側が被害妄想だとかお門違いで軽くあしらおうとしてる割にナワリヌイの帰国時の大騒動と連行は必死すぎて矛盾しており言葉で言わなくとも行動で異常さが伝わる。

ウクライナ侵攻の時に、ロシア国民はなぜ反対しないのかなんて批判を目にしたことがあるけれどナワリヌイ騒動を見ていたら、行動しても目立ちすぎると連行されるしデモをしても機動隊のような人たちに力ずくで抑え込まれてしまうのを見ると声を上げる危険性もわかってしまって、ロシア国民が直面している困難に胸が痛くなる。
ウクライナ侵攻に対して批判の声を上げたロシア国営テレビの元職員の女性。娘と国外避難したそうですが、息子は母親であるその女性を非難して、国外逃亡は同行せずロシアに残っているとテレビの報道で見ました。お母さんが余計なことをした、と怒ったとか。

大義として素晴らしいことでも、立場や視点や何をその人が優先するかで感じ方が違いすぎて、苦しい。

諦めてはいけない。
ごくシンプルで大事で良く言われるメッセージではあるけれど、アレクセイの毒殺未遂に遭った様子やドイツでの暗殺組織に対する調査や帰国の様子を見た後だと彼からのその言葉がとても心に響く。
検察庁法改正案Twitterデモは必死にしたし、その後も首相官邸や自民党への意見投稿も頻繁にしていたけど、検察庁法改正案の幕引きが賭け麻雀の話で終わった気がしていて私には呆気なく思えたし一一般市民が届かない権力により操作されているんだと壁を見せつけられた気がして萎縮してしまい、やる気がなくなってしまった。真実もわからないし、何も変わらないんじゃないかと積極的になれずに、今は受け身でたまに署名するくらいになってしまっていてもう止められないから緩やかに絶望を受け入れるくらいの状態でしたが、この映画を見て、ただただ諦めてはいけないんだなと奮起させられた。

思い出すものが合っているかわからないけど20世紀少年みたいに、抑圧されていても諦めない心を燃やし続ける人がいて、時間が経っていつか形勢逆転できる時がくるとか、鬼滅のお館様が言っていたみたいに人の想いは続くから、ナワリヌイの行動が多くのロシア国民や、この映画を見た日本人とか心を動かして変えていくのだと思うと、本当に諦めてはいけないなと思った。

素晴らしく意義があり価値がある映画でした。
映像に残したことが素晴らしい。
顔を映すこと、この行動は素晴らしくともリスクがあるはずで貫いた勇気が素晴らしい。

暗殺組織にメンバーに電話して、1人から有益な証言が得られて撮れ高最高でしたが通話を終えてからその本人の安全を心配する様子に、そうか。真実を追求することの裏にはその人の身の安全の危険があるのかと気付き、何もかもが命懸けで現実の話なのだと怖くなって、ラストの文章に悲しくなった。
コンスタンティン(名前これだったかな)、消息不明か…。

『13歳からの地政学』を読んだ時、国際法を破っても罰しようがないし抑制力が法自体にないといった内容があったと思うのですが、ナワリヌイに関してもウクライナ侵攻にしてもプーチンの今の言動がおかしなことはわかるのに止められないのを見て、その通りだなと歯痒い気持ちです。
地政学的に自国の利益を優先する選択をしてプーチンを非難しない国もあったり、お花畑の平和思考だけでは話がおさまらないのがまたもどかしく、どう解決すればいいか頭が真っ白でわからないです。

ナワリヌイが無事に刑務所から早く、一刻も早く出て家族の元に戻れますように。
Ginny

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