悪魔の毒々クチビル

グリーンバレットの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

グリーンバレット(2022年製作の映画)
4.0
※「トロール・ハンター」はフィクションです。


京都屈指の殺し屋国岡が山奥で殺し屋の新人研修兼試験を担当するお話。

最近何かと話題の阪元祐吾監督の最新作。そして「最強殺し屋伝説国岡」の続編兼スピンオフでもあります。
個人的には「ベイビーわるきゅーれ」の二人よりも、伊能昌幸演じる国岡の方がキャラ的に好きなので結構楽しみにしていました。
一方で物凄く不安だったのは、メインの殺し屋を目指す女の子達がミスマガジン受賞の演技未経験者だったことですね。
結果的には思いの外楽しめましたが。

今回は指導する側なのもあって伊能昌幸の格好良いアクションシーンは多くはないんですけど、相変わらずイコ・ウワイスリスペクトな高速打撃とかが非常に好みで素晴らしい。
ボクシング経験者なので、そっちよりのパンチメインの打ち込みにしていますがこっちも見応えありました。
戦闘の間の取り方なんかはドニー・イェンを参考にしたそうな。
あのちょっと気だるそうな雰囲気というか、生活感丸出しの人間臭さも良いですよね。多分、割と素に近いキャラなんじゃないかと思う。そのくらい自然な感じがしました。
「殺し屋はヒーローじゃない」と言っておきながら、一番ベタなタイミングで駆け付ける終盤とかは分かっていてもニヤけてしまいました。
そこでタイトルインするのも前作同様で、当初はスピンオフ扱いでしたが改めて今作が国岡の映画だということを強調するナイス演出でした。
伊能昌幸本人は格闘技の経験はあれど、映画におけるアクションの勉強は基礎しかやっていないとの事ですが、人並み以上に動けるのに加えアクション映画のファンであるのもあってか魅せる格闘は充分上手いと思うので今後もこのジャンルでもっと注目されて欲しいですね。

ミスマガ6人も誰がずば抜けて良かった悪かったは特に無かったです。っていうとディスっている感じになっちゃいますが、よく頑張っていたとは思います。
演じたキャラがウザいとかそういう苛立ちはあれど、演技自体がノイズになることはなかったので一安心。
終盤はアクションにも挑戦しますが、ここも意外と悪くない。二人でリロードする所とか、スタイリッシュなカッコ良さがありました。
段々と仲良くなっていってチームで戦えるようになるのも王道ですね。
あの射撃が一番上手くて斧も扱う女の子の元ネタが「ザ・レイド GOKUDO」のハンマーガールらしいけど、流石にジュリー・エスティールのパロディは無理があったのか言われなきゃ元ネタ分からないキャラなのは惜しい。だったらせめて斧は二刀流にすれば良かったのに。

序盤の面接シーンや国岡のバトルシーンが相変わらずPOV的なモキュメンタリーの手法で、「あぁ、またそれか…」と若干萎えるも途中からちょいちょい普通のカメラ撮影も混ざってきてラストバトルは格闘をちゃんと堪能出来るという、前作で大いに不満だった所が一部改善されたのが一番嬉しかったかも。
因みに今作のラスボスは「黄龍の村」の日本刀おじさんこと中村竜介だったので、見応え抜群でした。やったね。もっと格闘観たかったな。

マイナスだったのは合宿パートが滅茶苦茶緩かった事とかね。
後半に国岡が実はちゃんと個々の才能を見抜いて作戦とかも立ててくれていた事が分かるんですけど、劇中では女子達のウザさが全面に押し出されて困惑する国岡側がメインで描写されていたのでもう少しあの団結バトルに説得力を持たせる場面があれば良かったです。
まぁそう言う面倒くさい若者に淡々とツッコミを入れる国岡も面白かったけど。
「じゃあ今回は実際に殺してみましょう」とさらっと殺され要員(多分やくざとか暴力団から拉致って来たのかな)を連れてきて実技試験する流れとかは、こういう世界観ならではでここも良かったかな。
あと前作のベスト脇役の殺丸が出なかったのが残念でした。あとヒットガール大好きガールも。
代わりに真中が再登場しますが、ぶっちゃけあんま印象無かったんだけど今作では結構良いキャラしていました。
板尾創路はグレネードランチャー撃ったりしながらいつも通りの変なおっさんでした。

それと最近の阪元作品にも共通して言えるのが、撃たれた時の血飛沫や傷が雑なんですよね。
流石に脳天ぶち抜かれた時はちゃんとやっていますが、胴体なんかは適当過ぎる血が飛び散るくらいで衣服をよく見ると綺麗なままだったりする事がよくあるのでここは絶対改善した方が良いと思うんだけどな。

前々から監督がこのシリーズは何作も作って行きたいと、何なら国岡だけで食っていきたいとすら公言しているので恐らくまだ彼の活躍が拝めそうなので楽しみですね。
因みに「ベイビーわるきゅーれ」のコンビとも共演させたいみたいで、と言うことはやっぱあっちの方で言及されていた京都の殺し屋っていうのは国岡の事だったのね。
あの二人だと絡み方が今作と被りそうではありますが、伊能&伊澤の最強タッグバトルとか想像しただけでも激アツなので是非とも実現させて頂きたいです。

もっと国岡のアクションがあれば良かっただのあれこれ言いましたが、パンフだけでなくキーホルダーも買っちゃったくらいには好きです。
まぁ当初は国岡はカメオ出演くらいの予定だったらしいんですけど、その方向で作っていたら多分劇場まで観に行かなかったかな。

余談ですがジャケットの国岡のポーズは「ザ・スーサイドスクワッド」のイドリス・エルバの真似をしたら、そのカットが採用されたみたいです。となると確かにその下は完全にキングシャークですね。
丁度俺のスマホの待ち受けがここ一年ずっとスースクなので、妙に親近感が湧くエピソードでしたとさ。