Kaorin

ヴィレッジのKaorinのネタバレレビュー・内容・結末

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

終わった後、喉にドス黒いものが詰まってるような感じが残り息苦しかった。
哲学的でしんどい映画だったが、これぞ映画体験と感じた。
横浜流星はじめ、俳優陣の鬼気迫る演技と重苦しい演出が更に見る側を追い詰めてくる。

牧歌的な村に要塞のような産廃工場、村人たちの被る代々続いてきたと思われるお面は、がんじがらめの村人たちの生き様を表しているようだ。
奥行きのある映像。重苦しい空気感ながら、暴力シーンなどはサムペキンパーのような70年代的な、どこかドライな雰囲気もあり、シビれる。
ただ、黒木華の部屋での暴力シーンの効果音が急に大きく感じ、音にやや気を取られた。

ラスト、父と同じように、彼女の罪もかぶって火の中で自殺するかと思いきや、とりあえず生きててホッとした。(同じ藤井監督の「ヤクザと家族」も「余命10年」ま主人公は亡くなる)
あのラストの表情は全てから解放された安堵感か。刑務所行きだけど、やっと村を出られるとも言えるわけで…でも死体遺棄、殺人2人、放火…死刑は免れない。

エンドロール後に弟が村を出ていく映像がある。多分親の店も潰れ、姉も犯罪者になり、正義感は強いが言葉は上手くない弟が、村を出て幸せになれる気がせず、ラストでも暗澹たる気持ちになった。

それにしても、横浜流星の芝居、すごすぎんか。流浪の月でも驚いたが、更に進化を感じた。前半の、常に奈落を覗いてるような暗い瞳や声や全身から漂う雰囲気が生々しく、彼のメンタルそのものが心配になるほどだった。途中のキラキラモードは国宝級美貌がやっと生きたし、発覚後の記者につかみかかる突然の切れキャラや弟を説得するクズキャラ、全部説得力あるのすごかった。
こんな人いるよ、日本中に、って思った。
これでなんの賞もなかったら日本の映画界おかしい。
黒木華は、その表現力で、孤独な者同士が身を寄せ合う恋という名の共依存を絶妙に成立させていた。殺した後、子供みたいに手を広げてるの、なんかめちゃリアルに感じて、やっぱこの人すごいと思った。彼女の着ていたオレンジや黄色には何か意味があるのかな…

あの殺人シーンを最後の謎解きみたいにしてるが、あれは一連で見せた方が良かったのでは?とも思った。二人と共に観客もハラハラドキドキを味わえたかもしれない。
現に2度目を見たらハラハラ度がアップはさた。

なかなかの問題作だし力作。アニメラッシュに埋もれてしまってる印象だが、公開時期をずらせなかったのかな。配給側の賭けだったのか。
Kaorin

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