みりお

ヴィレッジのみりおのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.0
ああ〜本当にイヤな気持ちになった(褒め言葉)

小さな村の中に渦巻く様々な人間模様。
そこには、村八分、馴れ合い、法をも凌ぐほどの固いルール、無駄に強い結束力、同調圧力、井の中の蛙、超えられない格差など、様々な汚さがあって、本当に観ていて不快。
抜け出してしまえばいいのに、腐り切った小さな共同体の中が妙に居心地良くもあり、そしてその外はまるでサバンナのように感じるくらい恐ろしくて、決して満足していないのに居続けてしまう場所。
村の人々の考えや行い、すべてが嫌で嫌で仕方なくて、冒頭は「そんなところ抜け出してしまえ」と思うのに、観ているうちに観客である自分も、その村の尺度で物事を考え、些細なことで「あぁもう終わりだ」と感じてしまうあたり、共同体のルールというのは恐ろしい。

そこでハッと気付いた。
この村はあくまで共同体の一例であって、はたまた社会の縮図。
この馴れ合い、腐敗した共同体は、社会のそこかしこにあてはまるのだと。
家族、会社、ご近所付き合い…そこら中に、いろんなしがらみのある共同体があって、大なり小なり不は感じているのに、外に飛び出す勇気はなかなかない。

閉ざされた空間にいて決して良いことはないのに、でも閉ざされた空間は心地良くもあり、人間の帰属意識はなんて恐ろしいんだろうと思ってしまった。
だからここ最近、「越境」という言葉が流行ってるんだろうな。
私もつい最近「越境研修」に参加してきましたが、研修に行くまでは結構不安で…💦
でもいざ会社の枠を飛び越えてしまえば、普段関わらない人との関わりは本当に楽しいし、会社以外の場所に繋がりができるのは刺激になった。
そしてなにより"会社の外の世界は広い"と感じて、「私もまだまだだな」とも思ったし、「会社の中での多少の失敗なんて、なんてことないじゃない」といろんな意味で心が軽くなり、気持ち新たにいろんなことに取り組めるようになった。
閉ざされた空間は、閉ざされた価値観しか生まない。
その恐ろしさを、小さな村という縮図に落とし込んでまざまざと見せつけてくれた作品でした。


【ストーリー】

夜霧が幻想的な集落・霞門村に暮らす片山優(横浜流星)は、母の君枝(西田尚美)の作った借金の返済のため、村の山に建設された巨大なゴミの最終処分場で働いていた。
職場の作業員に目をつけられた優は、浮かばれない日々を過ごしていた。
しかし幼なじみの中井美咲(黒木華)が東京から戻ったことから、優の人生が変わっていく。
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