ぶみ

ヴィレッジのぶみのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
3.5
All the glory of a man is nothing but a short dream.

藤井道人監督、脚本、横浜流星主演によるサスペンス。
ある日本の集落、霞門村のゴミ最終処分場で働く主人公が、幼馴染が東京から戻って来たことをきっかけに、変わっていく姿を描く。
主人公となる青年、優を横浜、幼馴染の美咲を黒木華、村長を古田新太、村長の弟となる刑事を中村獅童が演じているほか、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗、杉本哲太、西田尚美、木野花といった個性派キャストが集結。
物語は、母親が抱えた借金と、父親が過去に村で起こしたある事件の汚名を背負って、日々処分場で変わり映えのない生活を送る優が、美咲と出会ったことで、一転村のヒーローとなっていく様が描かれるのだが、まず特筆すべきは、処分場誘致による補助金が、財政事情を大きく左右してしまうため、依存せざるを得ない村の体質と、村民の誰もが顔馴染みであるが故の閉塞感であり、これは日本の地方で少なからず見られるものではなかろうか。
そんな体質の村の首長を古田が見事に演じているが、それ以上に存在感を放っていたのが、村長の息子を演じた一ノ瀬。
処分場の運営組織の幹部になっているものの、明らかに村長の息子というだけで据えられているお飾りであり、中身は、各種ハラスメント上等のザ・マイルドヤンキーで、友達にはなりたくないが、一目置かざるを得ないキャラクターを怪演。
ただ、この古田と一ノ瀬が村の象徴として物語を引っ張っていく反面、この二人以外のキャラクターが少し弱めだったかなと言うのが正直な印象。
主人公の優にしても、もはや旧車となってしまったY31型の日産・セドリック(もしくはグロリア)に乗っているものの、それが、クルマ好きだから敢えて乗っているのか、はたまた単にお金がなくて古いクルマを乗り続けているのかが判別できなかったので、そう言ったことも含め、全体的に説明不足の感があるのは否めないところ。
そうは言ってもユートピアなのか、ディストピアなのか、表裏一体の世界観は悪くなく、厄介なことを押し付けがちな都会と地方の関係や、地方は地方で臭いものに蓋をする体質を如実に炙り出しているとともに、キャストの演技力が光る一作。

東京にも何もなかったよ。
ぶみ

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