鎌谷ミキ

ヴィレッジの鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.1
【能はね、自分の内面と向き合うものだから、理解しようとしないで自分なりに受け止めればいいの】

[あらすじ]ネット版
実の父が殺人を犯したことで、“殺人犯の息子”の烙印が押されてしまった片山優(横浜流星)。 彼は閉鎖的な集落・霞門村で、村人たちに蔑まれながら生きてきた。 ごみ処理場の仕事に追われ、母親の借金をヤクザに返済する毎日。

[レビュー]
藤井道人監督作品なので映画館で観たかったのですが、なかなか時間もタイミングも合わず…まさかの、公開2ヶ月後ネトフリ見放題。これは予想外すぎ…

『ある男』と同じようなテーマだったんですね…そこに閉鎖的な村(ヴィレッジ)と巨大なごみ処理場。ヤクザと不法投棄、妬み嫉妬、金や権力に目がくらむ人たちの行く末…なかなかてんこ盛り。余韻でコーヒー飲みながらぼーっとしてしまった。こういう作風は噛み締めていたいです。

終始重い空気が漂っています(休日に見る映画ではなかったかも💦)それだけでもないのも特徴。
その光の場面に輝いてるのが、勿論主役の横浜流星くん。私は『流浪の月』の演技をめちゃくちゃ評価していたので、本作も楽しみにしていたのですが、予想以上の演技幅です。序盤「これまさか横浜流星…くんだ!」と驚きを隠せないぐらいジメッとした影のある青年になりきってました。パワハラ男とは大違いです(『流浪の月』の役柄です、違いを比べてみては)

もう一つの特徴、能。なかなか馴染みの少ない伝統芸能ですが、能面が効果的に使われていました。のっぺらと無表情なような顔かと思えば、主人公の心理状態で優しい微笑んでいるようにも見える。なかなか思いつかない心情の見せ方だったかと思います。そして、村の能なので本格的ではないという意味で、歌舞伎俳優でもある中村獅童さんの能が見れるのは本作です。上の言葉は黒木華さん。難しく感じなくていいと思ったら、染み込んでくる能の声。

なかなか観客はハッピーな気持ちにさせてもらえない…犯罪者の息子とはこのような扱いを受けるんですね、悲しい…ほぼほぼ絶望してました、主人公と同じように。サスペンス部分は「あれは夢だよね?」と願ってたけど…うぅ。

本作は希望も描くけれど、現実はシビアだ。特に小さな村コミュニティにしか属せない小さな存在はといわんばかりの。時折能が出てきて幻想的にも見えるシーンもありますがね。見る人を選ぶ作品でしょう。
古田新太さんは通常通り、予想外だったのは木野花さん、特殊メイクで本当にわからなかったよ!最近よく見るんですかね?私は初めてかな、一ノ瀬ワタルさんもなかなかにワルでした。

その後に『最後まで行く』かぁ。やるなぁ、藤井道人(36)まだまだ期待してるよ✨これ、パンフ何書いてあったんだろうな…

やっと最近の日本映画観れたわ…↓
鎌谷ミキ

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