まず、横浜流星さんの演技の幅がすごい。
彼の迫力がこの映画の中で強烈な魅力を放っている。
そして黒木華さん。本人がどう思っていらっしゃるかはわからないけれど、「ノイズ」(2022)のときといい、不幸になる役がよく似合う。
さて、映画全体を見て思ったのは「楽園」(2019)でも感じた村社会の悪い作用。
実際村に住んだことがあるわけでもないし、あくまで人から聞いたことの受け売りでしかないけれど、村の文化や秩序を守るために誰かを悪者に仕立て上げる感じがとてもいやだった。
悪いことを特定の地域や人に背負わせるっていうのは、原発にも通ずる構造で、首都圏に住む人間としてはなんとなく他人事としては見られない感じがした。
映画の冒頭に出てくる能の演目というのが、結局のところ現実をよくせずに理想ばかり語っても、結局現実に足止めされるっていう教えの教訓になっている。
映画の中で何度か出てくる能面。まじまじと見ると、なんだか不気味。
でもこれが結局、本心をひた隠しにして平静を装う村の文化に重なったように思った。
他人が何を考えているかなんて所詮わからない。みんな能面をつけているようなもの。
信じられる人が誰かいるっていうのはとても大事だし、とても幸せなこと。いつ誰に裏切られるかわからない世界で生きるって、すごくつらいことだと思う。
