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ベルベット・ゴールドマインのkuuのレビュー・感想・評価

4.0
『ベルベット・ゴールドマイン』
原題Velvet Goldmine.
製作年1998年。上映時間124分。

70年代前半に流行したグラム・ロック・ムーヴメントを背景に、あるスーパースターの肖像を描き出した一編。既成の概念をうち破る、妖しく奇抜な数々のコスチュームも見ものっす。
米国・英国合作。

1984年、ニューヨーク。新聞記者のアーサーは、編集長にある事件の真相を探るよう依頼される。
それは70年代初頭のロンドンで人気を誇り、その後失踪したロック・ミュージシャン、ブライアン・スレイドの追跡調査やった。

英国のグラムロックシーンてのを振り返った作品で、90年代につくられた最も複雑な構成の音楽映画かな。
監督は『ポイズン』でインディペンデント映画界の鬼才となったトッド・ヘインズ。
音楽、文学、演劇、美術とか色んな要素が盛り込まれとって、何度も繰り返し観ることで、その奥深いトリックがわかるかなって、小生は2度目の視聴。
今作品は、妙に通俗的な官能性もあって、美青年アイドル映画としての魅力もたっぷり。アートと大衆性が合体した異色作で、へインズはカンヌ映画祭の審査委員長やったマーティン・スコセッシから 芸術貢献賞を授与されてる。
題名はグラム時代に彗星みたいに音楽界に登場してきたデヴィッド・ボウイの1971年の曲のタイトルから取られた。
ヘインズはボウイに曲の使用権を求めたが許可は得られず、タイトルだけが残ったんやって。
『この曲は、僕の頭の中にあるこの時代のイメージや体質をうまく暗示している』
なんてヘインズは語っとるが、 ボウイの曲が使われへんかったことがむしろプラスに働いて、本作はグラムにインスパイアされた一種のファンタジーとなってる。
中心的な音楽は70年代に人気を博した ロキシー・ミュージックで『2HB』『レディトロン』とかが登場しゃす。
今作品で基軸となんのは三人の青年で、グラム ブームの中心にいるミュージシャン、ブライアン・スレイド、彼と恋愛関係だった米国の過激なミュージシャン、カート・ワイルド、10代のときは二人のファンで、成長後はジャーナリストとなるアーサー。
74年にブライアンが舞台で殺害されるが、それは偽装殺人だったことが発覚し、ブライアンはスターの座を追われる。
事件から10年が過ぎ、アーサーは真相 を探るため、マネージャーや元妻を訪ねるん。
ロックカルチャーの影響を受けて育ったアーサーは観客の分身のような存在で、彼はかつての憧れの人々の過去を辿り直すことで、己のアイデンティ ティも模索することになる(アーサー役のクリスチャン・ ベールの切ねぇ演技がgood.)。
そんな彼の心の旅と並行して、同性愛的な性の解放史も描かれていく。
起源は 『ドリアン・グレイの肖像』で知られるアイルランド出身のゲイの作家オスカー・ワイルドで、幼年期の彼が画面にも登場し、その言葉も引用される。
ほんで、彼の異端の精神がロッカーたちに引き継がれる。
『それまでリトル・リチャードやエルヴィス、ローリング・ストー ンズなどにも、ホモエロティックな要素があったが、 それを最も大胆な形で見せたのがグラムロックだっ た。
華やかな自己表現という意味ではボウイはワイルドの要素も引き継いでいると思う』とヘイン ズは語っとった。 ブライアンと恋に落ちるカート・ワイルド(当時は新人のユアン・マクレガーが大胆なパフォーマンスを披露はニューヨークの過激なミュージシャン、イギー・ポップがモデルで、宇宙から選ばれたエメラルドのピンが彼らのイメージの追求を手助けすっが、そ の性革命には危うさも潜んでいる。
今作品の後半じゃ解放的な70年代と保守的な80年代の違いがアイロニーまじりに描写され、一つの夢の終焉が語られるかな。
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