木蘭

ダークグラスの木蘭のレビュー・感想・評価

ダークグラス(2021年製作の映画)
3.8
 ダリオ・アルジェントがジャッロ映画と共に帰ってきた・・・が、帰ってきたソレは姿は似れど、何かが違う・・・。

 ゴブリンを彷彿とさせる音楽と共に始まり、ジャッロ的な残酷描写で娼婦が殺されるオープニングに(ホラーなのに)ワクワクしてしまうし、アーシアは出演しているし、間違い無くアルジェント印なのに、何かが違う。
 全てが穏やかなのだ・・・。

 往年のアルジェントといえば、フェティッシュな残酷描写の連続と引き替えに崩壊するプロットが定番なのだが、きりきりとした残酷描写あまりないし、プロットも崩壊しない。
 まぁ、相変わらずプロットは雑だし、襲いかかる犬は尻尾を振っていたりするけど・・・でも昔の御大なら、大切なプロットを無視しても、そういう些細な部分を許さなかったろうな。

 その分、エロ多め。ヒロインが脱ぎます。
 ヒロイン役のイレニア・パストレッリはダンサーだったのでスタイルは素晴らしいのだが、顔が人工的というかアレで、そこに加齢が加わって、肌も荒れていたりして・・・なんかそれはそれで、孤独な中年娼婦役として凄いリアル。この映画一番の残酷描写だったりするんだよな。

 しかしこのヒロイン・・・まだ生活に慣れていないとは言え、聴覚では無くひたすら触覚を使って動く。
 主人公が盲目ならば、繊細な音の演出でサスペンスを盛り上げるのに、本人が大声を張り上げたり、不用意に動き回って大きな音を立てたりするものだから、そういう事は一切無い。
 たぶん監督がガンガン音楽を掛けたかったからなんだろう。

 それと往年のジャッロと大きく違うのは、人々の無関心の中で犠牲者が残酷に死んでいったのに対して、この作品では、何かアクシデントが起こると直ぐに周りの人が寄ってきて助けてくれるし、誰かが見ている。
 主人公達が困り事があっても、必ず誰かが助けてくれる。助けを求めた相手に意味も無く殺されたりしない。優しい(普通なんだけど)。
 昔は人間関係の希薄さを危惧する様な作劇だったのが、現在は過干渉だったり監視社会の影響を繁栄させているのかも知れない・・・が、たぶん違う。
 犯人ですら、社会と隔絶した人物や怪物が殺戮を繰り広げているのではなく、変質者だが人間との繋がりを動機に動いていたりするのだ。だからあっち側の存在じゃ無い。

 良い事は全然書けないのに、なんか楽しめました。
 たぶん、孤独な主人公達2人と犬が愛おしいからなんだろうな・・・ってホラーの感想か?
木蘭

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