三隅炎雄

夜の最前線 東京㊙️地帯の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

夜の最前線 東京㊙️地帯(1971年製作の映画)
4.3
東映の梅宮辰夫『夜の青春』シリーズを日活が郷鍈治でやった感じだが、下敷きはシュレシンジャー『真夜中のカーボーイ』で、郷がジョン・ヴォイト、岡崎二朗がダスティン・ホフマン、苦い味の青春(と言うには年食いすぎているけれど)映画の秀作になっている。
ダイニチ配給だからもうロクな製作費もなく画面が露骨に貧相で、溜息が出るようなその侘しさがむしろ、高度成長期東京の路地裏人生を描くこの映画の力になっている。私は学生時代に山本晋也監督の青春ピンクコメディを見た時の苦さを思い出した。友情出演か、梶芽衣子や藤竜也がちらり顔を出して一瞬だけぱっと陽がさす。ああ同時代だったのだなと、画面にいっそう裏通りのにおいが強まって、これは心のこもったいい映画だと思った。
キャスティングはヒロイン桑原幸子をはじめに沢たまき・由利徹他TV『プレイガール』井田組オールスターズ。相川圭子はなかなか良い役で、同時期に坊主頭で『プレイガール』の井田作品や『キイハンター』に出ていたけれど、坊主頭にされたのはこの映画だったのだな。
井田監督には正義感あふれる社会派『青春を返せ』と、徹底した不真面目路線の小林旭映画の二つの顔があって、これはそれらを結ぶ位置の映画と言えるだろう。桑原幸子は後のロマンポルノのヒロインたちへと繋がっていく役柄であった。
三隅炎雄

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