佐藤克巳

東京の宿の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

東京の宿(1935年製作の映画)
5.0
日本サイレント映画挽歌的な小津安二郎監督の喜八物シリーズ最終作で、「男はつらいよ」なんぞとは全く事にした結末となった人情喜劇映画の傑作。床を踏み抜くとどん底に堕ちる厳しい現実。妻に逃げられた喜八坂本武と長男突貫小僧、次男末松孝行の3人が、東京下町の工場街を職を求めて放浪する。木賃宿で見掛けた無職の女岡田嘉子、娘小島和子と広場で親しくなり、子供達は無邪気に遊ぶ。ある時、食堂で食事代を払って無一文となった3人は雨宿りしていたら、昔馴染みの食堂小母さん飯田蝶子に救われた。しかも地獄に仏、喜八に仕事の世話まで、子供も小学校に復学した。しかし岡田は、娘が疫痢に罹り病院費用に苦慮し酌婦に転じた。それを知って喜八は、飯田に大金を無心したが断られ、強盗に及び帰宅。金銭を子供に託し病院にいる岡田に届けさせ、飯田にこれまでの感謝と子供の面倒を頼むと警察に自首するのだった。なお、坂本の名演は言うに及ばず、飯田、岡田、松竹チルドレンの演技も素晴らしい。
佐藤克巳

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