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少年たちの時代革命のchibakoのレビュー・感想・評価

少年たちの時代革命(2021年製作の映画)
3.9
この時代にこの作品が存在することの意義はもちろんあり、ぜひ一般公開され、多くの人々に観てほしい作品であるが、映画としては後一歩で傑作になるところだった良作でもある。
反送中デモの最中に撮影を開始し、現実の風景とひりひりする絶望的な空気をとらえたネオリアリズモ的映画であり、自殺を企図して香港の街をさまよう少女YYを探す、メンバーひとりひとりの背景も真実味があり、時系列を移動する重層的な構造も見事だが、だからこそラストにリアルを手放してしまったことが作品としてはたいへん惜しい。
しかしもちろん、そこでリアルを選ばない理由も明白で、習近平政権の権力にねじ伏せられて、絶望しそうになりながらも、この作品を撮ることがまさにそうであるように、今も闘っている人々がいるからだ。

一方で、逃げたり降りたりすることも時には大切だということは、渦中にいるものに軽々しく言えることではないが、でも「わたしもここに残る」という選択は、果たして誰かの救いになるのだろうか、とも思った。

享受してきた基本的人権を、自ら手放そうとしている日本の数年後のことも考えながら観た。
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