EnzoUkai

少年たちの時代革命のEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

少年たちの時代革命(2021年製作の映画)
3.8
これまた、リムカーワイ監督特集上映にて。
ただ、これはカーワイ監督作品ではなく、彼が配給に乗り出した作品。
昨年、ドキュメンタリー作品『理大囲城』と共に公開され話題になった作品。
であると共に、実は取り扱いが難しい作品としてなかなか目にすることができない作品になってしまってると言う。
言わずもがな、2019年の香港民主化闘争が舞台になってる作品。殊更日本は騒擾状態を忌避する風潮があるから、若者たちの闘争を描く映画を配給はおろか劇場そのものが掛けたがらない。右翼か左翼か、どちらからも狙われかねないってところだろう。
今私がここでスクリーンの中で闘う若者たちを礼賛しても、それはそれで標的になりかねない。扇動的だとお叱りを受けることになる。
と言うより、日本人の大半は世の中を掻き乱す若者を馬鹿にしてる。

それでも敢えて私は言う。
この映画は若者が見るべきだ!
民主化と言う大義名分の下に惹かれる若い心が見事に描かれてるし、あの香港のきな臭い雰囲気がよく分かる。
闘争の良し悪しは後の世が決めるだけであり、それは現時点では何も分からない。でも、闘った彼らの姿には、美しさを感じてしまう。

あくまでネタバレせずに書いているので、誤解が生じかねないので付け加えるが、当時の香港の実際の映像がふんだんに使われているが、キチンと劇映画として成立してる。『理大囲城』のようなどストレートな闘争を追うわけじゃない。
不思議に私は舞台劇のような錯覚を覚えた。
この映画、若者たちに見て貰いたいと強く感じてるのは、闘争への誘いでもなんでもなく、人と人との繋がりをキチンと描いてるからなのだ。それは、本当に現代日本の課題であり、たとえ細い繋がりでも人と人とは繋がってるという強いメッセージを発してるからなのである。
今の日本の若い子たちが繋がれないことで悲嘆に暮れていることはよく知っている。
いや、そんなことないよ、と積極的に我々は彼らに投げ掛けていかなければならない。
それにはこの映画はうってつけなのである!
EnzoUkai

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