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千夜、一夜のnanaのレビュー・感想・評価

千夜、一夜(2022年製作の映画)
4.5

釜山国際映画祭出品作品
プレミア上映で鑑賞


不幸かもしれない
生き方が下手に見えるかもしれない
でもこの人をとても美しいと思った。

特定失踪者として発表された行方不明者。
拉致された人もそうでない人も。
その方達の多くはわからないままだ。

夫が突然居なくなり何十年も待つ登美子(田中裕子)。
思いを寄せてくれる男性もいるが彼女の心はあの頃のまま。
夫と暮らした家に住み、夫の残した声の残ったカセットテープを微笑んで聞く。

きっとこの人の中で受け入れない、受け入れたくない、帰って来ない理由もわからないのだから。

愛する人をずっと待つ。
この愛しかた

寝室で少女のように話す声は無垢で時間が止まっていて。
愛らしい透明感がたまらなく可愛い。


対して夫の行方不明から別な道を歩もうとする奈美(尾野真千子)
この人ももがき苦しみ、でも進もうとする。

対照的な2人の出会い
どちらも激しいものを内に秘め、でも淡々と毎日を生き抜く。

周囲の人物の危うさからの奇行。

“行方不明”
本人以外の人まで巻き込み人生を変えてしまう

登美子と奈美
どちらの生き方が正しいかはわからない。
そしてどちらが幸せなのかも本当の心の中は解らないと思った。

後半は切なくて涙が止まらない。
あるシーンで号泣でした。




人を愛すること
譲れなくったっていいじゃない






~~~~~上映後~~~~~


久保田直監督
この日を迎えられたのは万感の思い。
拉致されたのではないかと言われた失踪者リストから着想を得た。
自分の意思で家出した人は何故どんな思いで消えたのかと思った。
ちょっとしたすれ違いや裏切りで人は変わる。
クランクインまで6年、その後コロナで撮影休止。
やっとの思いで出来た作品。


尾野真千子さん
2人は対照的な選択
次の1歩を踏み出すには現実的な女性。
私は待つんだけど1歩を踏み出すタイプ
ちょっとずるいけどね(笑)
なんか私はこの役にモヤモヤして納得していない。
人を待った事はそんなにない。苦手。


安藤政信さん
男としてそんなに胸張れない役。
壺でも買って幸せになりたい(笑)
無意識に儚さを演じていた。
田中裕子さんがこの役に推してくれた。
消えてしまう役だったので凄く胸が痛くなりながらどんどん帰りずらくなると思った。
強い女性が苦手。消えてしまいたい気持ちは解る。
小野さんとの間に仕切り(感染予防のビニール)があって良かった(笑)


ダンカンさん
田中裕子見に来たのにお前かよって怒ってない?笑
代わりに幸せになる壺あるよー(笑)
僕も私生活でも待っている。2014年に妻を亡くした。
ある日突然戻って来てくれるような気持ちで待っている。
俺はこのまま待ち続けると思う。
撮影中ずっとそんな事を思ってた。


田中裕子さんは体調不良で欠席。
早くお元気になられますように。

コロナで1度撮影が中断された作品です。
完成されて良かった。




一般公開は10月7日から

この雰囲気はぜひ劇場でご覧になって下さい。
感動が胸にひしひしと押し寄せます。
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