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千夜、一夜のKUBOのレビュー・感想・評価

千夜、一夜(2022年製作の映画)
4.5
今日の試写会は『千夜、一夜』Fan’s Voice独占試写会。

久しぶりにちゃんとした日本映画を見た気がした。

いろんな国からゴミが流れ着く浜からは、多くの人間が失踪する。

佐渡島で失踪した夫を30年待ち続ける女トミコ(田中裕子)。そのトミコの前に2年前に夫が失踪した女ナミ(尾野真知子)が現れる。

島には度々半島からの不審船が出没し、拉致されたと考えられる特定失踪者も数多くいる。

ナミはトミコの助けを借りて、夫ヨウジの行方を探すのだが…

失踪者の帰りを待つ気持ちは人それぞれ。失踪の理由がわからない以上、拉致されたのか(?)、自ら失踪したのか(?)、私は愛されていなかったのか(?)、生きているのか(?)、死んでしまったのか(?)、その思いの中で、待つ人の心は病んでいく。

失踪してから30年と2年では、待つ妻の年齢も状況も異なり、トミコとナミ、それぞれの思いは同じようで、同じではない。

「帰ってきてほしい」「今さら帰ってきても…」待つ身にはそれぞれ様々な思いが交錯する。

日本には8万人の失踪者がいるのだと言う。そして拉致被害者の可能性のある失踪者リストから、ただ家を出ただけだと、拉致などされていないと申し出てきた人がいる、という話から本作の企画はスタートしたと言う。

青木研次によるオリジナル脚本がすごい! 脚本執筆の段階からトミコは田中裕子に当てがき。ナミ役の尾野真知子は、尾野の「田中裕子さんと共演したい」という達ての願いからキャスティングされたのだそうだが、田中裕子との2大演技派女優の競演は見応え十分。

清水靖晃の音楽、佐渡島の自然、最近の日本映画にはあまり見られなかった芝居の間。

実は久保田直監督の作品は初めて見たのだが、素晴らしい監督だ。ラストの田中裕子の熱演には圧倒された。

ある程度、人生を重ねた人の方が心に染みる。『千夜、一夜』、傑作です。
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