千夜、一夜のたかちゃんのレビュー・感想・評価

夫を長年、待ち続ける妻。島の人たちは、再婚話を持ってくるが、離婚していないので、と断る。断られた男は船に乗って姿を消す。残された母親は、息子の帰りを待つ。そして「待つ」ことの気持ちをようやく理解するのだ。本作は北朝鮮に拉致されたらしい男の家族が、捜索に奔走するハナシではない。『めぐみ』、『めぐみへの誓い』。タイの奴隷船員として拉致された『ゴースト・フリート』といった、社会に向けた作品ではなく、人間の心、内面を描いた、静謐な文体の作品である。それは拉致被害者家族の気持ちにも通じるものがある。