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千夜、一夜のSoulFoodKitchenのレビュー・感想・評価

千夜、一夜(2022年製作の映画)
4.2

いつまでも心に残り染み入るエエ映画やったな〜。
日本海の風景は、青でも無い赤でも無い、白でも無い黒でも無い、どこまでも曖昧な霞んだ色で溢れてる。
青色もグレーがかった青色もあるし、黒と白の間にも何種類もの色がある。
それは、人間の幾重にも重なった心の色、そのもの。

突然、消えた男がいてる。
残された女は、いつまでも考え続ける。
生きているのか死んだのか、何が原因か、私が悪かったのか?何が気に障ったのか?
永遠に答えの出ない自問自答が続くだけ。
それは、どんなにケジメを付けても同じ事。

映画は静かに静かに淡々と進んでいく。
時と共に進んで行く、一つ一つの心の中の景色を描いて、一つ一つの心のヒダを紐解くように。
青でも無い赤でも無い絡み合い重なり合った心の風景を描いていく。
これぞ映画である。
田中裕子が暗い部屋で、そこにはいない行方不明の旦那と話す。
思わず心の中から「ゾクゾク」と言う音が聴こえてきた。
そして、冷たい日本海の波が裕子の身体を容赦なく打ちのめす。
日本映画史に残る名場面である。
地味で決して楽しめる要素も無いが・・・
葬儀での義足には微笑んだけど。

おそらく10年後も20年後も語られる邦画であると思う。
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