甲越

千夜、一夜の甲越のレビュー・感想・評価

千夜、一夜(2022年製作の映画)
4.1
田中裕子が桟橋で遠くを見ているパンフレットに魅せられて観たが、なかなか重いテーマの作品だった。何のあてもなく、失踪の理由も判らずに、ただ待ち続けることがいかに辛いかが切々と伝わってくる。何よりも新しい人生を歩むために、踏ん切りをつけるタイミングの難しさを痛感する。過去にひたすらしがみついているわけではないが、それでも不在の夫との思い出をそっと胸に抱いて、佐渡の漁港で一人いじらしく生きていく女性を田中裕子が見事に演じている。と言うか、この役は彼女にしか出来ないと思う。憂いのある表情を見せながらも、安易な妥協はしないという、切なくも凛とした主人公の生きざまは、パンフレットのカット写真そのものだと思う。
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