マーくんパパ

千夜、一夜のマーくんパパのレビュー・感想・評価

千夜、一夜(2022年製作の映画)
3.9
突然姿を消して消息不能になった夫を探す日々にも疲れ、長い時の経過をただ漠然と待つだけになった女の心のドラマ。佐渡島の水産加工場でイカを捌きながら(北への拉致含めて)何も手掛かり得られない生活を30年続けている登美子(田中裕子)は幼馴染の漁師春男(ダンカン)の求愛も断り1人待つ事に慣れてしまった一方、2年間の夫失踪で待つ生活に耐えきれず(新しい男と)やり直したいと思っていながらも区切りを付けるために登美子に相談に来た看護師の奈美(尾野真千子)とを対照的に描き出す。田中裕子の草臥れ諦観の女模様が実にイイ。それでいて偶然本土新潟で見つけた奈美の夫を連れ戻し奈美の感情を逆撫でする女の心理、30年時の経過で得た自分なりの心の安らぎを掻き乱されたくない女の情念が凄い。阿呆な純情漁師ダンカンも存在感十分でした。