真一

ファンタスティック・プラネットの真一のレビュー・感想・評価

2.4
 1970年代フランスのシュールなSFアニメ作品。登場する巨人族を欧米列強の白人や戦前の日本人に、小人族をアフリカ人、ユダヤ人、中国人に置き換えて観ると、ストーリーが理解できた。簡単に言うと、巨人ドラーグ族に虐げられる小人のオム族の反乱を描いた物語。ドラーグ族の指導者は、生きる権利を求めて立ち上がったオム族を見て「あいつらの学習能力と繁殖力は脅威だ」と警戒する。地元住民の決起に直面した植民地支配者の口からリアルに出そうな言葉だ。

 本作品では、小さなオム族を人間に位置付けているが、人間が持つ残酷さや醜さをむき出しにしているのは、むしろ、大きなドラーグ族の方だった。ドラーグ族の子どもたちがペットとして飼っているオム族をそれぞれ持ち寄り、クワガタ同士を戦わせるように格闘させるシーンは、その象徴だ。肌の色や言語、宗教、習慣が異なる異民族を差別し、虐待し、浄化してきた私たち人間の性を、皮肉っぽく表現している。オム族の逆襲に危機感を抱いたドラーグ族が、バルサンのような「除人剤」でオム族の死滅を図ろうとしたシーンは、ホロコーストのメタファーだろうか。

 もっとも本作品は、オム族が醸し出す偏見ややっかみも描写している。加害者と被害者の双方から「人間の醜さ」を感じられるような工夫が施されているように思う。

 世界観は独特で印象に残ったが、映像的には単調な繰り返しが多く、退屈な場面が目立った。ストーリー的にも、やや平板な感じがした。好き嫌いが分かれる作品だと思います。
真一

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