シートン

ファンタスティック・プラネットのシートンのレビュー・感想・評価

3.7
SF的な近未来を描いているのかと思うと、それは人類がいかにして叡智を獲得したかという神話である。音響映像の効果も素晴らしく、最高のアニメ映画と称されるところも首肯できる。切り絵で作られた画面、異世界の生物の造形も見事。

また人間の家畜、動植物に対する暴虐を異化して見せている点も面白く、またおぞましくもあり、この神話は、なぜ人間を家畜やペットと暮らしているのか、という問いに対する一つの答えにもなっている。いじめられっ子が場所を変えると、自分をいじめていたものと全く同一の振る舞いをするのと、同じなのである。

また人間がガスでバタバタと殲滅させられていく場面は、かの「最終的解決」を思い起こさずにはいられない。そのなかで異星人の世界にあっても、強硬派ではなく、リベラル派—連合国側—を勝利せしめているのは象徴的である。フランス映画であることを再確認。

しかし、この作品の短所は、異星人の瞑想とその生命維持の機構の設定が粗雑にすぎることである。彼らは別の星(「野蛮の惑星」)に意識(魂のようなもの)だけを飛ばし、彼らにとっての異星人と交雑して繁殖し、生命を存続させているというのだが、その異星人とは何者か、魂だけで生命を維持し再生産するとはいかなることなのか、ということがまったく理解できない。このようなディテールを綿密に構成した上で、それを描写しなければならない。ストーリーには余白を作ってよいが、設定に余白を作ってはならない。読者の想像に委ねるのはその想像の材料をしっかりと提供してからである。
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