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ファンタスティック・プラネットのTSのレビュー・感想・評価

3.1
【大人向けの社会派アニメ】
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監督:ルネ・ラルー
製作国:フランス・チェコスロバキア
ジャンル:SF
収録時間:72分
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発掘良品第18弾。
発掘良品としては異例のアニメ作品。かなり斬新な世界観であり、恐らく一度観たら中々忘れることはないと思います。ビジュアルは妙にリアルなので、アニメですが子どもが見るとトラウマになるかもしれません。

ある惑星で巨人のドラーグ人と小人のオム族が暮らしていた。小人のオム族はドラーグ人のペットになる者もいたが大半は害虫として駆除されていた。ある日大量駆除をしようとするのだが。

今作は二つのパターンで色々と考えさせられると思います。
まずは我々がドラーグ人の場合。というかこれが現状の人類と言えるでしょう。都合の良い生物をペットにしたり、生活に支障をもたらす生物を害虫とみなしたりします。果たして人間社会とは何なのか?幸福の社会と謳いあげる現代の人間たちですが、なんたるご都合主義なことよ。
それは我々からすると幸福な社会であって、他の動物から見る幸福な社会なんて微塵も考えられていない。
檻に閉じ込められた動物たちは果たして幸福なのか?
海に生きる生物たちは来る日も来る日も人間という捕食者により絶命させられている。

非常に難しいテーマですが、現在の地球の支配者は間違いなく人間です。なので、人間には幸福な社会を追求する特権が備わっているのかと思います。同種さえ幸せであれば社会としては成功していると。
あわよくば他の生物にも等しく幸福であってほしいと思いますが、そうもいってられない。人間も生物なので何かを殺して食わなければ生きられない。また、人間を食おうとする生物から身を守らなければならない。

こうした幸福とは矛盾した現状が今も続いているのです。道徳的な話になりますが、地球レベルで見て、人間が幸福であればそれで良いのか?ということになります。

と、まあこんな話を解決するのは相当骨がいるのですが、つまるところ、ドラーグ人は現在の我々を体現した存在です。

そしてもう一パターンは単純明快で、オム族の立場で考えるということ。
普段我々が殺してる害虫の気分になりこれを見ると、本当に恐ろしいものだと感じざるを得なくなります。ハチの気持ちがよくわかります。そりゃあ無作為に仲間が殺されたら反撃したくなりますよ。

と、この作品はどちらの立場になって考えてみても、結果的に人間社会の矛盾を感じずにはいられなくなります。
差別禁止といってもそれは人間の中だけであって、他の種族は対象外。

人間がつくった法なのだから、人間にしか適用しないのは当然のことだ。
といわれればそれまでですが、改めてあらゆる種族との共存が如何に難しいかということを知らしめてくれる作品と感じました。

『ズートピア』みたいな町が一番理想卿なんですよね。「生物は何かを殺めて食わなければ生きていけない」という絶対的な掟がこの世から消えれば、このような世界が実現するかもしれませんね。
まず無理ですが(笑)

アニメーションとしてみても繊細な動きが多くて秀逸。音楽も聴きやすくて中々のものです。少し進撃の巨人を彷彿させられましたがグロテスクではないです。興味のある方はどうぞ。
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