真世紀

日本暴力地帯の真世紀のレビュー・感想・評価

日本暴力地帯(1997年製作の映画)
3.2
冒頭、産廃処理場を汚い手を使い、住民の反対を押しきって推進など、あこぎな真似をした暴力団幹部らを次々と襲う男・鬼頭清次(中条きよし)。その背中には刺青で刻まれた「会長代行」の文字。

時は遡り、昭和末期の愛媛県松山市が舞台に。鬼頭が若頭を務める地元の暴力団矢野組が仕切っていたが、日本最大の広域組織、神戸の大和田組の手が松山にも伸び、進出してきた仙波組による幹部の切り崩しにさらされる。老組長(「仮面の忍者赤影」の白影役で知られる牧冬吉)は抗争を避けるべきとの意向だったが、先走った組員の仙波組襲撃の報復として命を落とす。

鬼頭は大和田組の幹部居並ぶ、事始め式に単身乗り込み、幹部らを蹴散らして大和田組長(芦田伸介)に白刃を向けるが、さすがにもう少しのところを取り押さえられる。その場で殺されても当然のところを大和田組長の鶴の一声で命は取られず、服役へ。

刑期を終えて出所した鬼頭を迎えにきたのは清水健太郎演じる大和田組若頭。再び、目の前に通された鬼頭に大和田組長は平成の暴対法下で任侠道を守るためと全国制覇の意義を語ると共に、その任侠道に反する振る舞いをする組織内の不届きものに影から制裁を下す役目を果たしてもらいたいとオファー。その場では引き受けず、今は亡き組長の遺した妻と子を見届けるべく、松山に帰った鬼頭。かつての姐さんは駅前のブティックを営み、組こそ無くなったものの港湾仕事の事務所を維持。だが、鬼頭がかつて砂浜で相撲を取るなどしていた子の方は長じてグレて若い仲間とつるんでいた。そんな二人に向けられる仙波組の罠。遂に鬼頭が大和田組長のオファーを受けての制裁初仕事に乗り出すまでを描く。

単に鬼頭が影で手を下すだけではなく、会長の意向を汲んで清水健太郎の若頭が手を貸してヤクザ社会の表向き用の工作を担うのが味噌。

劇画家の村上和彦が原作、監督のシリーズ第一作。鬼頭が口にする「正義ならざるをもって渡世するは成らず」。よりによって構成員が次々と不祥事を重ねる維新から出馬、参議院当選。国会質問で自身の新曲とディナーショーの宣伝をしてしまう中条きよしに、今こそ噛み締めてもらいたい言葉であるよ。
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