人は物じゃないから右から左へという訳にはいかないよね・・・という話を、言葉は適切じゃないかも知れないけど、スマートで洒落た描き方で語る。
とにかく奇をてらう事なく、一つ一つが丁寧でセンス良い表現で描かれた、派手ではないけど良質な作品。
基本的には悪人は出てこないし、里子のシモンの実父が抱えていた問題や、ヒロインが里親になる過程は描かれない。シモンも大人たちの意識の投影としてニュートラルに描かれるので、全体として重たくならない作りになっている。
現実はもっとドロドロとしたモノなのだろうし、時には闇も存在するんだろうけど、そういう暗部をえぐる様な事を語っても、もう社会が前に進めないという事なんだろう。
ある種のロールモデルとして、希望と不安がない交ぜに成った、ガラス越しの少し霞んだ風景を描くぐらいが丁度良いんじゃないかな。
とにかく、人とカメラとの動きが美しい。
オープニングから子供も大人も良く動く。子供たちは駆けずり回り、はしゃぎ、騒ぎ、駄々をこね、それに合わせて大人たちの心も体も動き回る。子育て大変。
そしてそれを捉えるカメラも良く動く。それでいて、子供たちが全くカメラを意識していないのが凄い。
まるで三位(子供と大人とカメラ)一体のダンスの様。
出だしのパーティでのダンス、好き。