素晴らしかった。
最初から最後まで「素晴らしい」と実感した新作は、本当に久し振り。
正直で蛇足なく、毅然としてて、でも温かい── まるで本作のエデ医師(実際の名医本人が出演)のような作品。
今どんな境遇の人にも「ぜひ観て」と言いたい。
終始淡々としているのに約2時間 惹きこまれ、“あの場面” で不覚にも嗚咽してしまった。
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どの人物も抑えた立ち振る舞いで、実在の人物たちを覗いてるような感覚の中、発せられるのは金言ばかり。
エデ医師の言葉も至言だし、演劇教師の主人公が役者志望の生徒達の演技を静かに見据えて真を突く問いかけをする授業シーンは、驚くほどリアルな空気感。
どの場面も繊細。
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テンポも、目に映るものも、職人的な繊細さ。選曲や使い方も秀逸で、あくまでやり過ぎない。
家族間のやり取りは、吟味された言葉や所作が どこか身に覚えありと感じさせ、自分や周りの人のことを重ねてしまう。
何を大切にするのか、改めて思い巡らす機会を与えてもらった。
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特別先行試写会。
本編の前に、(最近の試写会では珍しく)トークゲストの笠井信輔アナが登場。
簡潔かつ温かな語りで、映画をこれから観る器づくりをして下さりスタート。
「観る前に、これだけは知っておいて欲しい」と言って、映画に出てくる主治医が、このストーリーのモデルとなった実際の医師本人によって演じられている、という話を共有。
「“素晴らしいけれど映画だからでしょ?” というのではなく、実際に実在の医師がやっていることだ、という目で見てほしい」
「当事者本人を役者に使うのは繊細な試みで、過去の例で言うと、クリント・イーストウッド監督が『15時17分、パリ行き』で やって… なかなか難しかった(うまくいっていなかった)ところもありましたが、今回の映画は成功していると思います!」
上映後のトークでは、奥様の芽原ますみアナと共に、癌サバイバーならではの経験を、パワポ画像を見せながら、丁寧に共有して下さった。
なんたって、経験したご本人なので、真実味が違うし、当事者でないと分からない繊細な部分も聞くことが出来た。
最近も、メディアに記事を載せてもらうため(あるいはテレビで放送してもらうため)に、映画への理解や興味を深めることとは直接関係ない、バラエティ番組まがいのトークイベントをやる試写会やプレミア上映が少なくない中、映画を観ただけでは分からない部分を深める、またとない機会を得たトークイベント付き試写会だった。