健一

愛する人に伝える言葉の健一のレビュー・感想・評価

愛する人に伝える言葉(2021年製作の映画)
3.7
『・・・・・・・・・・』




母の最後を看取りました。

20年以上も前、まだ20代前半の『ガキ』だった頃の話です。
一緒に看取ったのは 叔父 と 叔母。
つまり母の『弟』と『姉』です。
最後の瞬間。私は何も言えなかった。
今 思い返しても不謹慎なのかもしれないのだが。
50歳を過ぎた いい歳したおじさん、おばさんがまるで子供のように『うえんうえん』と泣いている。
何故かその姿のほうに衝撃を受けてしまったのだ。
今から 母 が旅立つというのに。
『健ちゃん。最後に何か言ってあげなさい!』
叔母に強く言われたのだが、親戚の前で という恥ずかしさと子供のように泣いている叔父と叔母の姿の衝撃で・・・
私は最後に「愛する人に伝える言葉」を言えなかった。
別に後悔はしていない。あの時なんて言えばよかったのか未だに分からない。
強がり? なのかもしれない。
やはり日本人はフランス人のようにはいかない。
恥じらい と 衝撃 に私は勝てなかった。
私がもし、『最後の瞬間(とき)』を向かえる時が来たら 恐らくこの時のことを思い出すような気がする。
その時、心の中で言おう。
『母(かあ)ちゃん。あの時はごめんね。』と。

さて本作。
ドヌーヴ、ブノワ・マジメル、セシル・ド・フランスというビッグスター共演の感動作。
膵臓癌を患い余命宣告を受けた息子と支える母、そして彼の主治医と看護師の苦悩の日々。
形は違えど同じ『ツラさ』を抱えている『四者四様』を偽りなく描いていて終始涙が止まらなかった。

『旅立つ息子の母』を演じたドヌーヴは大女優の貫禄たっぷりだったが、いつものドヌーヴ。特に本作で驚くような演技ではなかった。
大女優なのでこの程度の演技は余裕でこなしてしまうのだろう。

本作でセザール賞の主演男優賞を受賞したブノワ・マジメルは素晴らしかった。
恥ずかしながらブノワ・マジメルの出演作品を観るのはかなり久しぶり。
なんかショーン・ペンにソックリな顔立ちになったな。
彼の迫真の演技に号泣しまくりだった。

そして意外に素晴らしかったのは主治医を演じたガブリエル・サラ。
でもなんとこの人!実際の現役の癌専門医なんだそうで!😵
ということは実際にも本作のような接し方を患者にしているということなので。
本当に頭が下がります。

医師同士のカウンセラーや俳優の卵たちへの演技指導などのシーンを交えて『考える』『伝える』『心構える』大切さを我々観客たちに 嫌味なく 届けてくれる優しい演出はフランス作品ならでは。

そして息子!
実の父が死を向かえようとしている。
息子の行動‼️痛いほど伝わった。
そう! あの扉は 重い。



2022年 10月13日 10:45〜
シネスイッチ銀座 screen 2
💺182席。
客入り 70〜80人。

さすがシネスイッチ銀座。
この手の作品の動員力は凄いね。👍
秋 のシネスイッチ。なんかいい。🍁
健一

健一