メル

愛する人に伝える言葉のメルのレビュー・感想・評価

愛する人に伝える言葉(2021年製作の映画)
4.0
先日、学生時代の後輩で余命宣告を受けて緩和ケア病棟に入院した友人の見舞いに行ったばかりだったので、色々と感情が揺さぶられる場面があった。

彼は、どんな治療や努力も意味を成さない無力感と、今後やって来るだろう痛みへの不安を語っていた。
そんな彼にかける言葉も無く、学生時代の思い出話をするのが精一杯だった。

ここに登場する末期癌患者をケアするスタッフの姿は、実際の癌治療専門医のガブリエル・サラ氏が演じている事もありとても説得力があり、彼の台詞ひとつひとつに頷きながら観た。

「死んでいく者にとっての希望とは、旅立つ許可をもらう事。言葉で言わなくてもそれは本人に伝わるもの」
ちょっと哲学的な感じもするけど言わんとすることは分かる。

よく頑張ったね、こっちのことは大丈夫だよ…という雰囲気を伝える感じだろうか。

結局、人間はひとりで死んでいくものだ。

医師は何とか男が捨てた息子の事を聞き出そうとするが、男は話さない。
約束通り息子の話を医師は男にはしない。
息子も散々悩んだ末に生前の父親には会えず、息子の輸血の話も本人の耳には届かず、母親でさえ一瞬席を外した時に男は息を引き取る。

その辺がとてもリアルでお涙頂戴の陳腐さが無いのが良い。

現実的な事を言えばブノワ・マジメルがどう見ても39歳には見えなかったこと。
最近すっかり太めになった彼が役作りでかなりスリムになったのは喜ばしいことでした。是非キープして欲しい。
メル

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