ゆかちん

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリームのゆかちんのレビュー・感想・評価

3.2
デヴィッド・ボウイとは何だったのか?


ロックミュージシャン、デヴィッド・ボウイの人生と才能にスポットを当てた、デヴィッド・ボウイ財団初の公式認定ドキュメンタリー。
ボウイが保管していたアーカイブ映像からの未公開映像を「スターマン」「チェンジズ」など40曲以上の楽曲とともに、本人の過去のインタビュー、映像のモンタージュによって、その一生の物語を綴ったもの。



ドキュメンタリーなんだけど、なんか独特な世界観で最初から最後まで貫かれた作品だったな。始まったとき、これはドキュメンタリー?映画?みたいに首傾げてた笑。

まさにKHAOS。
色彩豊かやし音楽もガンガンで。
その音楽や目まぐるしい映像とともにボウイの思想や哲学の中にダイブするような感じ。


そして、
「デヴィッド・ボウイは自分自身を隠し、自分から逃げてきたのかな」
…ていうところから
「デヴィッド・ボウイはずっと自分自身を探していたのかな」
…ていうところに着地するような作品。


新しいキャラクターを造ってなりきってたのとか。
先進的な音楽やアート性の高いビジュアル。
片目の色が違ったりするのもあるけど、ほんと不思議な魅力。釘付けになってしまう。
中性的というより両性具有という方がしっくりくるというのか。
美しくもあり、危険な感じもする。
惹かれるのに、離れたくもなる。
世間に衝撃を与えるというか、ロック界に新しい扉を開かせるのわかるわ〜って。

でも、そんなビックリな存在でありつつ、インタビューの答えではウィットに富んでいて、インタビュアーが思わず負けたな〜みたいな顔するような上手い返しをしたり。
頭が良い人なんだろな〜。

そこから、ベルリン時代を経て、80年代は大衆的な「トップスター」になる。

アーティストあるあるだけど、最初は自分の好きなものとかマイナーでもこだわったものを追究していくけど、あるラインに来ると大衆的なものの価値を理解し、そこに向かうことがある。

デヴィッド・ボウイもそういう過程を辿ってたのかなぁと。
ただ、彼の場合はそのタイミングが絶妙だったし、大衆的なものに向かっていたとしても、ベルリン期を経てというところが意味あるし、そのクオリティや根本精神は曲げてなかったんだろかなと。

タイミングが絶妙なんはほんま。
80年代てバブルな時代でしょ?そのタイミングでちゃんとその時代に合う音楽や魅せ方をしてるんだもんな。
90年代は90年代で、価値観の広がりを察知してカオスの時代をうまく乗ろうとしてたのかなと。
それが、ちょうど良い年齢のタイミングでこの時代が来てるんやもんな。
80年代にその転換をしたからといっても、年を取りすぎてたら逆効果だし。


アーティスティックなカラフルなファッション、派手なメイクも素敵だけど、私は、髪をサラリとさせて、スラッとしたスーツを着こなしている時が好きだな〜。
最強にカッコよくて美しいやん。
阪急電車の写真とかマジうっとり。

…て思ってたら、阪急電車の写真でたー!笑。

日本のことも取り上げられてて嬉しかったな。
ヤングオーオーて、親から昔聞いたことあるような笑。


まあ、デヴィッド・ボウイの思想や哲学が全て正しいとは思えないけど、でも、考え方としてはなんというか、広い世界を、概念とかを見てたのかな〜。その視野を見た上での人生とか、日々のことというか。
もちろん、彼も人生の中でその考え方は変化していくわけだけど。
こういうのは、ずっと一つのところに留まるのではなく、色んな国を旅していたのもあるのかな。それぞれの国の文化や価値観、宗教に触れてきて。


何年か前、東京でやってたデヴィッド・ボウイ展に行った時も思ったし、この映画を見ても思ってた、「デヴィッド・ボウイとは何なのか」
結局、一言では言えない多面的なところがあるからやっぱりわからない笑笑。
なんていうか、「核心を掴ませない」という感じがあるなあと。
もちろん、私が彼の作品を聴き込んでないからていうのもあるんだろけど。
でも、彼は「デヴィッド・ボウイ」という作品について完璧に仕上げていて。
で、あるライン以降は来させないような薄い膜を張ってたのかな〜て。
それ以上踏み込むのは無粋だよ、みたいな。

だからこそ、時代が流れてもずっと残る存在なのだろうな〜。

そして、デヴィッド・ボウイは、聴く人にとっては「解放者」だったのかな。
当時の彼のファンだという人たちの顔とか話を見てるとそう思った。
個性を大切にするところとか、若者たちを解放したんじゃなかろうかと。
あと、1日1日を無駄にしないとか、夢についての考え方とかね。


てか、デヴィッド・ボウイの曲って、そこまで「わかりやすい」印象は無いのに、ズバーン!って刺さる曲があるのが凄い。
だから今でもCMやら映画やらで使われるんやろう。

歌はもちろんやけど、サウンドとかギターの使い方も上手いよな。ヒーローズのあのギターめちゃんこ好きやわ。


先見の明や時代を読む力があったのはあったんだろうけど、全てが彼のプラン通りなんじゃないかとも思える不思議さ。
もちろん、普通の人である面もあったやろし、流れるままとか、たまたまなこともあるんだろけどさ。
でも、そうやって伝説化してもいけるくらいの存在だよな〜。

こうやって色々巡ってみると、
デヴィッド・ロバート・ジョーンズとデヴィッド・ボウイを切り離し、コントロールしながらの人生だったのかな。

最後のエンドロールでスターマンが流れてきた。
この映画を観た後にこの歌詞を聞いたこと、ボウイがこの世を去った今であること、これらのことから、このスターマンはデヴィッド・ボウイ自身なのかなとしんみりした。


There’s a starman waiting in the sky
He’d like to come and meet us
But he thinks he’d blow our minds
There’s a starman waiting in the sky
He’s told us not to blow it
‘Cause he knows it’s all worthwhile
He told me
Let the children lose it
Let the children use it
Let all the children boogie
ゆかちん

ゆかちん