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デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリームのTPのレビュー・感想・評価

4.2
 デヴィッド・ボウイが保管していたという様々なジャンルのアーカイブから選りすぐった未公開映像と数々の名曲で綴ったドキュメンタリー映画 

 私にとってボウイは、洋楽好きになり始めた1983年に発表した「レッツ・ダンス」がとてもキャッチ―な内容で、70年代のグラムロックのいで立ちが強く印象に残っていたため、“売れ線路線に変更した過去のアーティスト”という捉え方になっていた。
 その後、30年以上の時を経た2017年12月になって、何かのきっかけで、70年代のボウイ作品を聴いてみようという気になり、年代により目まぐるしく内容が変化するアルバム群、成功作に安住しない製作姿勢に瞠目した。
 一方で、その音作りは私の嗜好から少し外れているので、どの作品も好きというわけではないのだが、その奇才ぶりには唸らされ、特に「ジギー・スターダスト」は超名盤。「ハンキー・ドリー」が名盤と思っている。

 さて、そんなこんなで彼の異才ぶりはよくわかっていたので、本作も期待したのだが、ボウイの残したアーカイブを多く使っていて本作を作るコンセプトはしっかりしているし、ボウイへの畏敬の念も十分感じさせながらも作り手のオリジナリティも存分に発揮されていて、期待を大きく超えてくる出来栄え。

 本作で気づかされるのは、1983年から数年のボウイは売れ線に阿たのではなく、彼の音楽に向かう姿勢がその方向に向いた期間だっただけということ。
 彼は生粋のアーティストであり、70年代はその表現方法の重たるものがロックであったに過ぎない。
 その後に彼が描いた肖像画の数々(これが特に素晴らしくて、画家としての才能も非凡だったと思われる)、俳優としての活躍、映像への探求心など、少なくとも私にとっては、知られざる彼の才能を堪能できる素晴らしいドキュメンタリー。

 彼はアーティストとして全くぶれずに時代を生きた。彼にとって世間の評価などどうでもよかった。デヴィッド・ボウイ、カッコいいなぁ。
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