melly

手のmellyのネタバレレビュー・内容・結末

(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

原作未読です。

日活ロマンポルノということでこわごわ見に行きましたが、想像より爽やかな作品で、目を瞑るようなこともなく最後まで見ることができました。以前見たビリーバーズとかの方が全然しんどかった。物語におけるシーンの必然性をどのくらい感じられるか、も大きい。

ここ最近見た映画の中で一番主人公に共感するところが多かったというか、重ねて見られる部分が多くて、そういうのも見やすさにつながっていたかもしれません。彼女ほど勇猛果敢ではありませんが。

ずっとおじさんといて、おじさんを見ていて、その中で突然手を差し出されて走り出されたらきっと世界がきらめくでしょうね!どんなにかきらきらして見えただろう!とそれが本当にまぶしくて。うれしくて、それで、切なかった。おじさんといる彼女も悪いわけじゃないでしょ。その眩しさは正しいから光って見えるわけじゃないでしょ。でもきっと、眩しかったでしょうね。そのことがね、少し切なかったりする。眩しかったからね、机の下で指先同士触れ合ったり、同じタクシーに乗り込んだりすることも楽しかったんだね。

人を大切にする人の目が、手が、とても印象的で、だから彼の「好き」は嘘じゃなかったと思う。その瞬間瞬間に彼が好きだと思ったこと、それさえも嘘だったらもう何も信じられないな。彼女は勇猛果敢であるが故にやや勝手でもあって、だからって傷つけられる謂れは少しもないのですが、彼女の惨めさは彼女のものというか、仕方のないことなのかもと思ったりもしました。
情けない顔をした男の人が好きなんだなと改めて思う。最後泣き顔でこっち向いてたの、あの顔も、かなり松居大悟さんという感じでしたね。好きです。

でもさぁ、好きでそうなったわけじゃないじゃんね。

妹の彼氏がホテルの壁に「めっちゃ緑じゃん!」って言ったときにさ、笑っちゃったんだけど、あまりにも違う人生で辛かった。ちゃんとホテルに行って楽しかった思い出にできる高校生と、カラオケでそうなっちゃう大学生と、そりゃ違うよ。違うよね。いやまぁ自分だってひとつの人生しか選べないわけだから何もわかっちゃいないんだけど、でも仕方ないよ。正確に気持ちを推し量ることなんてできないのですが、仮に彼女がわたしの見たように惨めだったとして、彼女が惨めなのは彼女せいだけど、彼女のせいではない。父親のせいでも家族のせいでもない。ただ、その道を歩いているというだけのことです。でもカラオケでセックスはするな。たむけんさんもすごい、わかる〜という役柄で良かった。なんかあんな感じの役ばっかり見てる気がするな。

あと、それまでなんの布石も打たれた感覚があんまりなかったんですが、最後にお父さんが彼女の名前を呼んだときにしっかり涙が込み上げて、ああわたしはお父さんのことが好きだなぁと思いました。なんかこうそこに、いろんなことを重ねたくないんですけど、重なるんだとは思うんですけどね、意味的には、でも重ねたくないね。それはそれだね。お父さんはお父さんだからね。

結婚する前に最後に一回だけ、どいつもこいつもなんなんだよと思うけど、してるんだから一緒だよね。そう。共同作業、共同責任。あなたがしたんじゃなくて、わたしとあなたでしたんだよね。

いろいろ思うところがやまほどありました。まとまらないので終わります。


完全に自分感覚ですが、監督松居大悟、原作山崎ナオコーラだなんて若い女性が観に来るものかと思っていたら、半分以上おじさんで驚いた。時間帯とかもあるかもだけど。知らない複数人のおじさんと狭い部屋で大画面で知らん人の裸を見て、わたしの人生において特殊すぎる状況だなと思いました。

____

「って言ってたでしょう」とか「つまり、〜」とか、「好都合です。意味のあることです」とか、それを復唱することとか、あとまだなんかたくさんたくさんあったんだけど、言葉がずっとよかった。好みでした。素敵でした。とても残りました。
melly

melly