ぼっちザうぉっちゃー

愛してる!のぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

愛してる!(2022年製作の映画)
3.8
SMというゲテな題材を、白石晃士監督のドキュメンタリータッチで描く青春コメディ。
その相性がいみじくも迫真さと素朴な爽やかさを引き立てていた。

プロレスラーから地下アイドル、SM嬢に至る主人公の経歴がそのまま、ショーの在り方と、立場や役柄の絶対的な関係性などの共通するテーマを伝えていて、とても分かりやすいし純粋に面白かった。

役としてはまず、高嶋政宏が本人役として存在しているだけでコミカルとリアリティを完全に担保していて唯一無二の配役だった。
ryuchellの両性的な雰囲気と芝居がかった様子も合っていて、いかにも怪しいクラブのオーナーを暗い方向じゃなくライトな感じに演出しているのが観やすくて良かった。
カノンは、女王様だけれど日本美人風の薄顔なのがなんだか余計にリアルに感じた。
ミサは、あどけない顔と絶妙なファイタープロポーション、垣間見える素直さと従順さ、などMの萌芽に十分な素質を持っていてとても魅力的だった。加えて女王様サイドに立った時の半ば顔芸とも言えるような演技もしっかり楽しめた。
また割りとたっぷりあった緊縛のシーンは、演者同士やシチュエーションのシナジーみたいなのがどこか心地よかった。

そしてやはり何より端的に魅力を表しているのがストップワードの「愛してる」。
それは「嫌よ嫌よ」が「好き」になる世界で、我に返って本当の拒否を表明する言葉。
そこで敢えて最上の好意を叫ばせるところに、抑えられない究極の愛のエクスクラメーションが露呈している気がした。
全体としては、ガールミーツガールのside Aだけにフォーカスしているような内容で限りなくカノン目線は共感しづらいけれど、だからこそあくまで一方通行で一方向的な「愛してる!」というミサの叫びが真っ直ぐ強烈に突き抜けるような感じがした。

今まであまりSMや緊縛といったジャンルにそそられたことが無かったけれど、今回得た感触を踏まえて挑戦してみるのもありかもしれない。