あき

夜明けまでバス停でのあきのレビュー・感想・評価

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)
3.0
幡ヶ谷バス停事件をモチーフにしたこの映画。
正直、見ていていろいろキツかった。
実際に起きた事件にしてもそうだけど、ホームレス始め”自分より下”に見立てた者に対する容赦ない攻撃は、正義感を履き違えたネットの誹謗中傷や不祥事を起こした者に対する社会的抹殺に至るまでの病的なネットリンチなど、様々な側面で顔を表しながら、自分より弱いと見立てた者を自分の安全だけはしっかり担保しながら、ただひたすら叩き続ける狂気に通ずる。
一方、本作の主人公はいろんな不遇が重なって不幸になって、いわゆる”弱者”となっていくが、
ぼくは政治批判には同調できない。
決して言い返してくる反撃のリスクのない政治への批判なんて、結局勇ましいこと言ってるようで自分の身の安全が保証されてる中でなされる匿名によるネットの誹謗中傷となんら変わらない。
それに、別に右でも左でもないけど、これまでの歴史において、政治の悪口を言ってなにか変わったことなどひとつでもあるのだろうか。
自分の境遇を嘆くなら、なにも自分という個人への状況改善という見込みを得られない政治批判をして時間を浪費するよりも、なんとかして自ら立ち上がるしかないのだ。
それが柄本明の腹腹時計という爆弾というかたちで表された皮肉、隠喩として世の中への不満をあぁいうかたちでずっこけさせるのは見事。
そして、実際の事件と異なる終わり方が、一抹の希望を残す。
それだけに、エンドロールのワンシーンはなんとも余計。
いい終わり方をしたのに結局そういう主張かいって。最後の最後でドン引く。
あき

あき