おそらく実話をベースに作ってあるのだろうし沖縄の貧困と暴力の問題を丁寧にリアルに描いていて、こちらも基本的にはそういうものを見に行ったわけなのだけど、救いのない展開が、ある意味型通りというか当然そういう嫌なことが絡んでくるよねー、という範疇から逸脱せず、映画が進むにつれて映画に求めるものってこういうことなのではないという気がしてくる。例えば「大人は判ってくれない」の少年はどんどん追い詰められ最後は寒々とした海辺で立ちすくむのだが、作品全体には瑞々しさとユーモア、ペーソスが満ちている。辛い状況に希望を読み取ったり、楽しい瞬間に悲しみや惨さを感じさせるのが映画を始めとする創造物の力であり、それは人間がそういう矛盾に満ちた存在だからこそのリアリティなのだと思う。沖縄の問題を誠実に描き訴えようとする姿勢は尊重されるべきだと思うのだけど、映画はもっと過剰で意外で豊かなものではないかと思ってしまった。
